景品表示法(正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」)は、商品・サービスについての不当な表示を禁止しています。たとえば、浴室用の洗い桶を浴室に置くだけで銀イオンが出てカビの発生を防止するかのような「優良誤認表示」(合理的な裏付けがないと公取委が判断して排除命令を出した)や、ソフトバンクモバイルが「通話料O円」などとした表示を「有利誤認表示」の疑いありと公取委が警告したものや、そのほかにも原産地を偽った表示などがあります。
現行の景表法では、このような不当表示を排除する権限があるのは公取委だけです。公取委は排除命令を出すことによって不当表示を排除します。公取委が「警告」、「注意」にとどめることもあります。
しかし、公取委がこれらの処分をする件数は増加しつつあり、あらゆる不当表示に目を光らせて排除するのは難しいのが現状です。
そこで、公取委が、景表法における不当表示について、消費者団体が個人に代わって差し止めを求めることができる「団体訴訟制度」を導入する方針を固めたとのことです(7月9日付日経新聞朝刊)。不当表示から消費者を保護するため、民間の力も活用しようというのがその趣旨です。
団体訴訟制度は消費者契約法の平成18年改正で初めて取り入れられた制度です。今年6月7日から施行されています。
真実でない事柄を告げたり、不確実な事柄について断定的判断をしたりするなど違法な勧誘の結果なされた契約について、消費者契約法は消費者の取消権を認めています。また、事業者の損害賠償責任を免除するなど消費者の利益を一方的に害する契約条項について消費者契約法はこれを無効としています。
ただ、これらはいずれも事後的な救済方法です。同じ悪質商法が続けば、さらなる被害者が発生します。被害の拡大を防ぐには悪質商法をやめさせる(差し止める)必要があります。ところが、差止めと言っても、すでに被害にあってしまった人には意味のないことです。今まさに被害にあおうとしている人に裁判を起こせ、というのも現実的ではありません。
そこで、消費者契約法は、「適格消費者団体」が不特定かつ多数の消費者のために差止請求権を行使することを認めることとしました。適格消費者団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人であることが必要です。6月7日の施行後、東京と大阪で2つのNPO法人が認定を申請中です。
このような適格消費者団体が、不特定かつ多数の消費者のために、不当な勧誘や不当な契約条項の差止めを求めて裁判を起こすことができるということです。
公取委が今後導入する方針なのは、この消費者契約法における団体訴訟制度を、景表法上の不当表示にも取り入れようというもののようです。なお、消費者契約法同様、損害賠償請求の権利までは認められないようです。消費者にも被害が及ぶ独禁法上の「不公正な取引方法」の一部についても団体による差止請求を導入すべきという意見もあったとのことですが、これについては見送る可能性が大きい、とのことです(前記日経新聞より)。