マンション管理組合を法人化するとどうなるのか
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<ポイント>
◆権利関係が明確になる
◆税法上はほとんど変わらない

マンション管理組合が法人となるには、当初(1983年ころ)は区分所有者が30人以上いなければなりませんでした。しかし、2002年の改正法によりこの条件は撤廃され、今日では区分所有者が2人以上いれば法人化できるようになっています。
区分所有者が30人以上という条件を撤廃したのは、小規模のマンションが増加し、30人未満の管理組合であっても、法人化のメリットが得られるようにするためです。法人化のメリットは権利関係を明確にできることです。

例えば管理組合が駐車場を増設するために隣地を購入した場合について考えてみます。
管理組合が法人であれば、管理組合の名義で登記ができますが、法人でないなら、管理組合の名義で登記することができません。法人でないなら、当該不動産について区分所有者の共有名義または理事長個人の名義で登記する必要があります。通常、理事長個人の名義で登記することが多いですが、その際、管理組合の名を併記することはできません。
そのため、不動産登記簿謄本を見ても、当該不動産が管理組合のものなのか理事長個人のものなのかがはっきりしません。
そうすると、抽象的には、理事長個人の借金の回収のために不動産が差し押さえられるおそれがあります。また、理事長が死亡した場合、当該不動産が理事長の遺産であるとの主張が相続人からなされるおそれがあります。
しかし、法人であれば、管理組合の名義で登記ができるので、当該不動産が管理組合のものであることが明確となり、そのようなおそれはなくなります。
また、法人であれば、管理組合の名義で電話加入権を取得したり預金口座を開設したりすることもできるようになります。

次に税法上の取り扱いについて考えてみます。
法人であっても法人でなくても、駐車場を区分所有者に使用させる事業(共済事業)の対価は、法人税・消費税の課税対象にはなりませんが、区分所有者以外の第三者に使用させる事業(収益事業)の対価は、法人税・消費税の課税対象となります。法人か否かにより差異は生じません。
もっとも、法人でないなら収益事業を行わない限り法人住民税は課税されませんが、法人であれば収益事業を行うか否かにかかわらず、少なくとも法人住民税の均等割が課税されます。すなわち法人住民税の均等割については、法人か否かにより差異が生じます。ただし、法人の事務所の所在地によっては、地方自治体に減免の申請をして減免措置を受けることができますので、均等割の減免措置が受けられれば、法人か否かによる差異はやはり生じません。

以上からすると、法人化する管理組合が増加してもよいようにも思われますが、国土交通省による平成20年度マンション総合調査をみても管理組合法人登記がなされているのは10.8%ほどであり、実際にはそれほど多くありません。
これは、管理組合が不動産を購入するケースがそれほど多くはないこと、法人化するには、法律上、集会において、区分所有者の4分の3以上かつ議決権の数の4分の3以上の賛成を得なければならず、ハードルが高いことが理由として考えられます。

今のところ、法人化するデメリットはそれほど考えられませんが、不動産を購入する、または、法人化した方が金融機関への対外的信用が高まって事実上融資を受けやすくなるというケースでない限り、法人化するメリットは大きいとはいえないと考えられます。今後、国が、法人化の有無により何らかの差別化を図るのか否か、注目されるところです。