<ポイント>
◆令和5年にフリーランス新法が成立・公布され、令和6年秋頃に施行予定
◆フリーランスの就業環境の整備が図られる
◆規制に違反した場合には罰則があるため企業側の対応が必要
前回に引き続き、令和6年秋頃までに施行予定のフリーランス新法について解説します。
前回は、(1)フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化に関する規制を解説しました。今回は、(2)フリーランスの就業環境の整備に関する規制を解説するとともに、フリーランス新法の施行に際して企業が取るべき対応について取り上げます。
1 募集情報の的確表示義務(第12条)
特定業務委託事業者が広告等でフリーランスを募集する場合は、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
2 妊娠・出産、育児・介護への配慮義務(第13条)
継続的業務委託を行うフリーランスからの申出があった場合、特定受託事業者は、妊娠・出産、育児・介護と両立しつつ業務に従事することができるよう、その状況に応じた必要な配慮をしなければなりません。また、短期や単発で業務委託を行うフリーランスについても、同様に必要な配慮をすることが努力義務とされています。
3 ハラスメント対策の体制整備義務(第14条)
特定業務委託事業者は、セクハラ・マタハラ・パワハラなどにより、フリーランスの就業環境が害されないように、フリーランスからの相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければなりません。また、フリーランスがハラスメントについて相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されています。
4 中途解約や契約不更新の予告義務、理由開示義務(第16条)
特定業務委託事業者は、継続的業務委託を中途解約したり更新しないこととしたりする場合には、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合を除いて、フリーランスに対して、少なくとも30日前までに予告しなければなりません。さらに、フリーランスが、予告日から契約満了日までの間に中途解約や不更新の理由の開示を請求した場合、特定業務委託事業者はこれを開示する義務もあります。
特定業務委託事業者が前回と今回で解説したような規制に違反した場合、公正取引委員会、中小企業庁長官または厚生労働大臣から、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令を受けることがあり、その上で命令違反や検査拒否等があれば、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
フリーランス新法に対する企業の対応としては、まず、自社の取引相手方が同法の適用のある「特定受託事業者」(フリーランス)であるか否かを確認することが前提となります。しかし、特定受託事業者であるか否かを確定することは実際上困難な上に、一度確認したとしてもその後の従業員の変動等で常に状況が変化するおそれがあります。そのため、個人事業主等の零細事業者に業務委託をする場合には、同法に対応できる体制を整えておくのが安全です。
具体的には、同法の施行日や関連する政省令・規則など今後の動向を注視しつつ、業務委託契約書などフリーランスへ交付する書面について、取引条件が明示されているか、中途解約・契約不更新の場合の予告規定を盛り込むか等を改めて確認し修正すること、フリーランス向けのハラスメント相談窓口を設置するなど社内体制を整備すること、同法の規制について関係部署への周知を行うことが必要となるでしょう。