<ポイント>
◆どこからがハラスメントになるかの判断が難しい
◆判例等でパワハラにならないからといってOKではない
◆適正な指導も業務であるとの意識が重要
パワーハラスメントに対する企業の防止措置が2020年から義務化されたこともあり(中小企業は2022年4月から)、企業でハラスメント研修をさせていただくことが多いのですが、そのなかでも特にパワーハラスメントをメインに話してほしいと依頼いただくことが多いです。
その理由は、どこまでがパワハラかわかりにくい、日常の業務で起こりがちで件数も多い、などが主な理由と思われます。
今回はパワハラについて感じていることをお話しようと思います。
そのなかで多くの企業も悩んでおられると感じるのは、パワハラと主張されているものの、パワハラではないと思われる案件への対応です。
ハラスメント研修の際に、「これがパワハラにあたるかどうか」、というテーマで具体的な事案について個別に質問をしたり、グループでディスカッションをして回答してもらったりすることが多いのですが、その際にも、比較的社歴の短い方や若い方は、問題のない業務指導のケースについても、パワハラであると回答することが散見され、一方、管理職の方は、この程度はパワハラではない、と回答される場合が多いように感じます。
この意識のギャップを埋めるための研修でもあるのですが、実際の場面ではそのために問題が複雑化することも多いです。
企業としてはひとつひとつのケースに対して真摯に対応し、説明を尽くしていくことが求められます。
また、研修や広報啓発などによって、どういうものがハラスメントにあたるかについての認識を共有していく必要があると思います。
とはいえ、厚生労働省や判例の基準でパワハラにならなかった事案であるから全く問題がないかと言えばそうではありません。
違法とまでは言えないにしても、部下が次々にやめたりメンタルダウンを起こしたりするような厳しい指導を繰り返す方は、ハラスメントとは言えないにしても、職場の空気を悪くしていないか、自分の感情をぶつけてしまって効果のない指導になっていないかを振り返る必要があると思います。
感情をぶつけて強く叱責することについて全く効果がないとは言いませんが、多くの場合には、叱られたほうは萎縮してしまい、指導の内容を理解しにくくなることも多いと思われます。
相手が言われている内容を理解して次の業務に活かすことができるような指導が目標であることは言うまでもありません。
パワハラをする人は繰り返す傾向があります。
部下への業務指示や指導は通常の業務として行うものなので、人に対して厳しい接し方をする傾向がある人は、職場の部下に対しても厳しい指導を繰り返しがちなのです。
また、パワハラを繰り返す人は、自分自身は業務遂行能力が高い人も多い傾向があります。
できない人に対して、できて当たり前、できないのは真剣さが足りないからだ、と考えがちなのかもしれません。
そういう人にパワハラの調査を行うと、部下がいかに無能かを力説し、自分の行き過ぎた指導に対しての反省が足りないと感じることがあります。
部下を持つ立場の方は、部下に対してハラスメントを行わないことはもちろんですが、部下に対する適正かつ効果的な指導を行うことも業務に含まれることを理解する必要があります。