ハラスメント問題が発生した場合の対応
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<ポイント>
◆秘密の厳守が非常に重要
◆対応はすみやかに
◆結論に不満が出るときもあるがやむを得ない

 

社内でハラスメントの被害にあったという申告がなされることがあります。
内部通報制度の利用という形であればそのルールに従うことは当然ですが、そうではなく上司として部下の訴えを聞くことや、総務部やコンプライアンス担当部署の担当者としてその対応をすることもあります。
このような場合に、どのようなことに気を付けてどのような対応をすればよいのでしょうか。

まず気をつけるべきことは秘密の厳守です。
何の気なしに仲の良い人や先輩などに相談してそこから情報が洩れることもあります。
情報共有すべき範囲を明確に決めそれ以外に広めないということが非常に重要です。
被害者の被害を拡大しないということも重要ですし、加害者とされている人の名誉を守る必要もあります。
ルール上情報共有の範囲が定められていればそれに従い、そうでない場合には被害者の了解を得たうえで必要な範囲で情報を共有する必要があります。

次に要求されるのは迅速な対応です。
ごく稀ではありますが、当職にご相談いただくケースでもなぜ数か月前の事案が今問題になっているのか、と困惑するケースもあります。
放置してなんとなく収まるということはほとんどありませんし、放置することによって被害が拡大し、放置した会社の責任が問われることもあります。通常業務もあるので大変ではあるのですが、やはり迅速な対応が求められます。
なるべく速やかに申告者から聞き取りをして誰からヒアリングをするかどうか、会社への希望等を聞いたうえで、関係者へのヒアリングを行うなどして事実関係の確定を行うことが必要です。
この際に被害者の意見や希望を無視してはいけないのは当然ですが、留意すべきなのは被害者がまるでクライアントであるかのように言いなりになるのも問題だということです。
端緒は被害者の申告であり、最終的には被害者に対する会社側が負うべき民法上の使用者責任等も念頭に置きつつ行動する必要はありますが、調査等はあくまで会社の自浄作用のために行うものである、というスタンスは忘れてはならないと思います。

事案の深刻さや加害者と申告者の人間関係等から当事者の切り離しが必要な場合もあります。
加害者側を自宅待機とする必要が出るときもありますが、その場合は原則として家で仕事をしてもらうかそうでなくても給与は支払うことになります。

事実関係がある程度確定すれば、それに基づき最終的な対応を決めることになります。
後の紛争化が予想される場合など、判断が難しい案件の場合は弁護士に意見書作成を依頼することも検討してください。
加害事実が認められた場合の対応には、事実上の厳重注意などのほか、人事上の異動や降格、懲戒処分などがあります。
その際、申告者や被害者に対し加害者からの報復行為などがないよう気を付けてください。
その一方加害事実が認定されなかった場合(事実そのものが認定できない場合と評価としてハラスメントと認められない場合があります。)には、その旨を申告者にフィードバックすることになります。
その際の理由は詳細なものや具体的なものである必要はありません。

なお、こういった問題のときに、ヒアリングの内容の詳細も申告者に知らせる必要があるのか、ということを質問いただくことがあります。
結論としては、詳細については知らせる必要はありませんし、知らせてはいけません。
ヒアリングの内容を関係者に伝えることで協力した人に不利益が発生する可能性があるからです。
結論として、例えば、「ハラスメントの事実が認められたので、厳重注意を行いました。」とか「・・・懲戒処分を行いました。」とか「申告の事実が認定できませんでした。」とか、「問題はあるもののハラスメントとまでは認めらませんでした。ただ、指導方法については行き過ぎた点がありましたので注意しました。」などのフィードバックが考えられます。
申告者から納得できない、という反発があるときもありますが、合理性のある方法で真摯に調査を行った結果であればそういうケースについても腹をくくるしかありません。逆に加害者とされた人に明らかな問題はなくても、こういうトラブルになったこと自体で注意すべきでは、という意見が出ることもありますが、それも適当ではありません。あくまで認定された事実に基づき是々非々で判断していくべきです。

ざっくりとした説明をさせていただきましたが、被害者が体調を崩している場合はどうするのか、切り離しが難しい場合はどうするのかなど、事案に応じて様々な問題が出てきます。
関係者のそれぞれの利益を守りつつその都度考えていく必要がありますが、早めに専門家に相談されることをお勧めします。