ステマ規制による初の行政処分事例

<ポイント>
◆令和5年10月1日からステマが景品表示法の規制対象とされていた
◆令和6年6月7日、景品表示法のステマ規制による初の行政処分事例が消費者庁から公表された
◆企業側から消費者への口コミ投稿の働きかけには注意が必要

ステルスマーケティング(ステマ)については、景品表示法の一部改正により、令和5年10月1日から不当な表示として禁止されていたところ、消費者庁は、令和6年6月7日、同月6日付けで医療法人にステマ規制について景品表示法違反に基づく措置命令を行ったと公表しました。本件がステマ規制による初めての行政処分となります。

本件においては、当該医療法人が、インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した者に対し、Googleマップ内の口コミ投稿欄のクリニックの評価として「星5」または「星4」の投稿をすることを条件にインフルエンザワクチン接種費用を割り引くことを伝えており、割引を受けた来院者が投稿した「星5」の口コミが事業者の表示に該当し、景品表示法に違反するとされました。

ステマ規制では、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」、つまり、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」が禁止されています。
これに関連して消費者庁は、「「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準」を公表していました。

本件では、表示を行ったのはクリニックの来院者である第三者であり、当該医療法人は割引をすることを伝えたにすぎず、「星5」または「星4」の投稿をすることを明示的に依頼・指示したわけではありません。
この点について、運用基準は、「事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある場合には、事業者が表示内容の決定に関与した表示とされ、事業者の表示となる」とし、「客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある」かどうかの判断に当たっては、事業者と第三者との間の具体的なやり取りの態様や内容、事業者が第三者の表示に対して提供する対価の内容、その主な提供理由、事業者と第三者の関係性の状況等の実態も踏まえて総合的に考慮し判断する、としています。

本件について上記判断要素をみると、当該医療法人は、ワクチン接種のためにクリニックに来院した者に対して、受付で「星5」または「星4」口コミ投稿による550円の接種費用の割引を伝えたとされており(やり取りの態様や内容、対価の内容)、提供理由は主にクリニックの宣伝のためと思われます。
以上のような事情を踏まえて、消費者庁は、当該医療法人が「表示内容の決定に関与しているものであり、当該投稿による表示は事業者の表示と認められる」と判断しました。

様々なサイトの口コミは、昨今、消費者にとって非常に有力な判断材料になっており、集客方法としても効果が高いものと思われますが、何らかの対価を示して企業側から消費者に良い口コミを投稿させるように働きかけをすることはステマ規制に違反するおそれがあるため注意が必要です。