最近、いわゆる企業不祥事があとを絶ちません。三菱自動車によるリコール隠し事件、日本ハムや雪印食品による牛肉偽装事件、西武鉄道や日本信販による総会屋への利益供与などは、その中でもとくに悪質なものです。
企業不祥事が報じられるとき必ず登場するのが「コンプライアンス」という言葉です。「コンプライアンス意識の欠如」、「コンプライアンス経営の推進」、「コンプライアンス専門部署の設置」等々。
この「コンプライアンス」とはいったいどういう意味でしょうか。
コンプライアンスは、「コンプライアンス(法令遵守)」と記載されることがあります。しかし、これは誤りです。「コンプライアンス」は「法令遵守」と同義ではありません。
また、「コンプライアンス(法令遵守等)」と記載されることがあります。これは、「等」をつけることで、コンプライアンスは法令遵守に限らず、それ以外のことがらも含んでいることを示しています。それ自体は正しいのですが、「等」にどういう意味が含まれているのかわからずに使われることが多く、結局は「法令遵守」と同義語のごとく使われているのが実情です。
コンプライアンスの本来の意味は、「人の願いを受け入れること」、「相手の期待に応えること」ということです。
したがって、「法令遵守」はその概念に含まれますが、それだけには限りません。「法令遵守」はコンプライアンスの最小限に過ぎません。法令に違反する行為なら、昔からの用語に従って、単に「法律違反」とか、「犯罪行為」とかの表現を用いればよく、わざわざ「コンプライアンス違反」などと表現して、その違法性や破廉恥性を薄めるのはかえって不適切です。
企業活動におけるコンプライアンスは、単に法令に違反する行為をしないというだけではなく、企業として、より倫理性、道徳性を高め、社会の期待に応える、という姿勢でなければなりません。
例えば、食品会社であれば、単に食品衛生法の基準をクリアしているだけではなく、より安全、より健康的な食品を消費者に提供しようとする姿勢がコンプライアンスにかなっています。
車の場合であれば、単に排ガス規制をクリアしているだけではなく、より環境にやさしい車(トヨタ・プリウスなど)を市場に提供していこうとする姿勢などがコンプライアンス経営というのにふさわしいのです。
また、株主に対する姿勢では、総会屋に利益供与を行うなどはもってのほかで、株主の意見や要望に耳を傾け、株主の利益になるような経営を推進することがコンプライアンス経営なのです。
これからの企業経営は、単なる法令遵守だけでは社会から支持されません。人間の幸福を追及し、環境保全を意識し、社会に貢献することを心がける経営、つまり「コンプライアンス経営」を志向する企業のみが発展し、永続性を保証されます。
これは、最近の流行語「CSR」(企業の社会的責任)という思想とほぼ同じです。
コンプライアンスの意味
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