最近新聞紙上で「企業不祥事」の記事があとを絶ちません。
カネボウの粉飾決算、西武・コクドの有価証券報告書虚偽記載とインサイダー取引、三菱自動車のリコール隠し、日本ハムや雪印乳業子会社の牛肉偽装事件、等々。
その他、総会屋に対する利益供与、談合、下請けいじめ、サービス残業なども。
これだけ、企業の法令違反、つまり不正・違法行為が多発すると、世間の企業に対する風当たりが強くなるのも当然です。
そこで、「コンプライアンス経営」、つまり法令を遵守し、倫理性を高めた経営ということが問題になるのですが、なぜ、最近とくにこの「コンプライアンス経営」が重視されるようになったのか、これについて企業はどのような点に留意しなければならないかについて述べます。
まず最初に、近時企業活動を規制する法律が大きく増え、かつ企業に厳しい内容になっています。
従って、そのような法律に対する知識をもつことが必要です。
具体的には、商法、証券取引法、独占禁止法、不正競争防止法、景品表示法、労働基準法、下請法、商品取引所法など、既存の法律が規制を強化する方向で逐次改正されています。
規制される行為の範囲が広くなり、罰則や課徴金の金額が引き上げられ、損害賠償額も高騰しています。
また、消費者契約法、金融商品販売法、公益通報者保護法、個人情報保護法など、企業の行為を規制する新しい法律も次々制定されています。
2番目に、最近は、いったん社内で不正・違法行為が行われると、悪いニュースはまたたく間に世間に吹聴されます。
マスコミに取り上げられるほか、インターネットによる匿名の告発などで、容易に社会問題化します。
「内部告発」を甘くみてはいけません。三菱自動車事件など、最近問題になった企業不祥事のかなりの割合は内部告発から社会問題化したものです。
若年社員や非正社員、リストラで解雇された元社員などは、(それが悪いことかどうかは別として)会社の恥部を外部に漏らすことにあまり躊躇しません。
正義感から、また自ら違法行為に加担しないため、内部告発に踏み切らざるを得ない下請け業者もあります。
3番目に、企業の不正・違法行為を社会的に糾弾することを支援する法律・制度が強化されています。
国民生活センターなど消費者の権利主張を支援する機関が増えています。
株主代表訴訟は、株主が簡単に企業経営者の責任(損害賠償)を追及できる制度です。
独禁法違反事案では、私人が企業の違法行為を差し止めることができるようになりました。
公益通報者保護法では、内部告発した従業員が会社から不利益を受けないよう保護されます。
最後に、企業が不正・違法行為を起こして社会問題化したとき、その企業が受けるダメージが前より大きくなりました。
西武鉄道のように(場合によってカネボウも)株式上場が廃止される場合があります。
日本ハムは消費者の不買運動で大きな損害を被り、雪印食品は廃業しました。
カネボウは事実上経営破綻し、UFJ銀行は東京三菱銀行と合併を余儀なくされました。
三菱自動車も青息吐息です。
このような企業存亡の危機に至らないまでも、いったん不祥事を起こすと、企業のブランド価値は落ち、売上不振や人材流出につながり、金融機関や投資家から見放されるなどの事態に陥ります。
従って、このようなリスクから企業を守り、持続可能性を確保するためには、法令を遵守し、倫理性の高い経営、つまり「コンプライアンス経営」を実行するほかなく、むしろそれが最も効果的な方法となるのです。