最近、ちょっと感動したことがある。
昨年秋とお正月に放映されたNHKの「超・進化論」だ。
その内容は、植物は動物と変わらないぐらい、すごく鋭敏かつ感度良くさまざまなことを感じていて、その感じとった情報を匂い物質に乗せて植物同士に、または昆虫や鳥にメッセージを送ってコミュニケーションをとっているという内容のものだった。
番組では、植物が虫に葉っぱをかじられたときに植物に何が起きるのかを最新鋭の蛍光顕微鏡により世界で初めて映像で捉えた様子を映していた。
この最新鋭の蛍光顕微鏡に特殊な光を照射して見ると、葉っぱをかじられた植物が、まるで「虫に葉っぱを食べられた!」と言っているかのように光って反応している様子が映像で見える。また、かじられた植物が防御反応として毒物質が出している様子も映像で見える。
植物は、虫にかじられたときは毒物質を出すが、雨に降られて葉っぱに雨粒が付いたときには、雑菌に対する防御反応として抗菌物質を作り出す。
植物が臨機応変に反応する様子がリアルタイムで映像で見えるのはすごい!
さらに、葉っぱをかじられて毒物質を作り出すのは、かじられた葉っぱだけではなく、植物の全身の葉っぱからであることも映像で見える。
かじられた葉っぱは、瞬時に匂い物質を発散し「害虫がいる。防御せよ!」と全身にメッセージを送っているのだ。そして全身の葉っぱから毒物質を作り出しているのだ。
この匂い物質によるメッセージは、まわりの植物にも伝わり、まだ食べられていない隣の植物も毒物質が作り出していた。「近くに害虫がいる。次は自分が食べられる。」と防御しているのだ。その様子をすべて映像で捉えていた。
さらに驚いたのは、植物は虫の咀嚼音(の振動)と唾液に含まれる化学物質から、自分を食べる相手を特定し、相手に応じて攻撃に使う防御物質の種類や量を変えていることも明らかになってきているという。
ちゃんとどの虫に食べられたのかわかって反撃しているのだ。植物、すごいぞ!
この匂いによる「食べられた!助けて!」のメッセージは、害虫の天敵である昆虫や鳥へのメッセージにもなる。天敵の昆虫や鳥は、風で運ばれて来るメッセージを受け取り、「餌がある。」と判断して植物のもとにやって来る。自分で追い払えない植物は、害虫の天敵を呼び寄せて排除してもらうのだ。
植物は、ただじっと葉っぱを食べられているだけではない。瞬時に自分を食べた相手を特定し、まわりの植物、昆虫、鳥にメッセージを送って、自らまたは「天敵の天敵」と手を組んで反撃している。
恐るべし、植物の感度とコミュニケーション力と戦略。
人間が感知できないだけで、植物は言葉がなくても匂い物質により、まわりとめちゃくちゃコミュニケーションをとっている。
そう思うと、うちのレモンの木とアゲハ蝶のアオムシの関係もちょっと違った視点で見えてくる。
うちのレモンの木には、毎年アゲハ蝶が来ての卵を産みたくさんのアオムシがいるのだが、少しでも他のアオムシが食べかけて歯形が付いた葉っぱは他のアオムシが食べたがらないということには何となく気付いていた。
アシナガバチが来る時期になると、アオムシがハチに食べられないように室内で飼育するのだが、このとき、食べかけの葉っぱを入れるとアオムシは嫌がる。仕方なくきれいな葉っぱを与えていた。
「何枚も少しずつ食い荒さず、食べかけの葉っぱをまず食べてくれ。」と思っていたが、もしかしたら毒物質が出ていたのかもしれない。単なる贅沢ではなく毒物質を感じて嫌がっていたのかもしれない。(違うかもしれない。単なる贅沢かもしれない。)
アオムシがレモンの葉を食べる時期に、ちょうどアシナガバチがアオムシを食べようとやってくるのも、ハチがたまたま良い餌場を見つけてやって来たのだと思っていたが、もしかしたらレモンの葉っぱが「アオムシに食べられている。助けて。」というメッセージを送っていたのかもしれない。そして、そのメッセージを受け取ったアシナガバチがやって来たのかもしれない。
まあアシナガバチにすればレモンを助けてあげようと思って来たわけではなく、餌があると思って来ただけだろうけれど。
そもそもマンション上階にポツンと置かれたレモンの匂いを遥か遠方から嗅ぎつけてアゲハ蝶が来るだけでもすごいと思っていたが、そんなのは序の口なんだろう。人間でも近くならレモンの匂いは分かるのだから。植物は人間が感知できないレベルのもっといろいろなメッセージを送っているのだろう。
おそらく、そう何年もたたないうちに匂い物質を感知するセンサーをスマホにつないで、植物のメッセージを言葉に変換するアプリなんかが出てくるだろう。
そうすれば、レモンの木が「アオムシに食べられている。助けて。」と本当に言っているのが文字で見えるかもしれない。
今は、レモンの葉っぱが黄色くなったときも、これは水分不足?または栄養不足?いや、日差しが強すぎ?と人間側でいろいろ考えて対処しないといけないけれど、そのうちにアプリひとつで「水がほしい。」なんて植物からのメッセージを正確に受け取れるようになるかもしれない。
そして、それはそんなに遠い先のことではないような気がする。