今、イアちゃんと暮らす日がくるのが楽しみです。
イアちゃんとは、隠し子でも外国人の友人でもありません。犬です。キャバリアです。おてんばな女の子の。
前々から、犬を飼いたいなぁとおぼろげには思っていたのですが、今の家はペットが禁止だし狭いので長い間諦めていました。ところが最近、犬を飼いたいなぁという気持ちがまたふつふつと沸いてきたのです。
そして、実際にペットショップに行ってたくさんのかわいい子犬たちを見てみるとその気持ちはさらに強くなり、引越しをしよう!そして犬を飼おう!と思うようになったのです。何も犬のために引っ越すわけではありません。今の狭い家からの引越しも長い間の案件で、何度も家を探しかけては頓挫していたのですが、両者がぐぐっと近づいて早まったといった感じです。
昔、友人と海に行ったとき、近くにいた夫婦が柴犬をつれていたのですが、その犬がものすごくかわいくて、飼い主のいうことをよく聞くとても賢い子だったのに感動し、そのときから飼うなら柴犬がいいなとずっと思っていました。
耳がピンと立った賢く凛々しい男の子。名前は強そうにケンシロウがいいかな・・・。
ところが、ペットショップに行ってみると私の考えを全く変える子に出合ったのです。キャバリアの男の子に一目ぼれです。
キャバリアはふわふわの毛に覆われた垂れた耳とまんまるな目の、凛々しいというよりかわいいタイプの犬です。
この子がいいなぁと思いながらしばらく毎日様子を見に行っていましたが、数日後、いなくなりました。売れてしまったのです。
ああ、やっぱり、男前だったしなぁ。人も犬も顔か・・・。
そのキャバリアの下のケースにいたのがイアちゃんなのです。
イアちゃんは、ちょっとぶちゃいくな女の子のキャバリアで、顔にはほくろのようにいくつも斑点があり、ちょっと痩せていて、自分の尻尾を噛んでぐるぐる同じところをまわったりして(犬の本によると、こういう子犬は選ばない方がいいみたいです)、最初に2匹並んでいるところを見た人は、決してわざわざその子を選ばないだろうと思うような子なのですが、元気の良さだけはNo.1なのです。
自分のフンの上であろうがお構いなしに走りまわるので、本来真っ白なはずの毛はいつもくすんでいます。ところが、不思議と美人より魅力があるのです。
ぶちゃいくで元気な女の子のかわいいこと、かわいいこと。
いつの間にか愛嬌たっぷりのこの子が気になって仕方がなくなっていたのです。
犬の本によると、ぐるぐる回ったりするのは常同行動と言われ、ストレスなどでなるらしいのです。まだ小さな子供なのにストレスをためているなんて・・・。運動不足と愛情不足のせいなんだろうな。救ってあげたいなぁ。
そんなイアちゃんは、他の子犬が売れていくなか、もう6ヶ月を過ぎてずいぶん大きくなっているのにまだ売れず、ケースの場所もだんだん店の奥の方に移動して行き、そのたび値段も下がっていっています。体が大きくなってもケースの大きさはみな同じなので、だんだん窮屈になって、売れ残れば分が悪くなっていきます。
何となく毎日のように見ていると、イアちゃんは私の顔を覚えてくれたようで、遠くからでも私を見つけると大喜び(大暴れ)してくれます。私を飼い主だと思っているかもとちょっと嬉しくなります。
「イアちゃん、うちの子になる?」
ちなみに、「イア」はギリシャのサントリーニ島にある私の一番大好きな町の名前で、私が勝手に名前をつけてそう呼んでいます。
この間、ついにイアちゃんが売れかかりました。若いお金のなさそうな夫婦が値段の下がったイアちゃんに目をつけたのです。
イアちゃんが幸せになるならまぁいいかと寂しくその様子を後ろで見ていました。イアちゃんはその夫婦がケース前で構ってもちょっと尻尾を振るくらいでしたが、遠くに私を見つけるととても興奮して中で大暴れして喜んでくれました。
そのうち、ケースから出され、値札も外され、いよいよお別れかと思っていたのですが、どうもその夫婦は気が変わったらしく、イアちゃんは無事(?)店に居続けることになりました。
いっそイアちゃんが売れてしまえば心置きなく男前を飼えるのにと思うこともありましたが、今ではすっかり情も移り、「飼うならイアちゃん!」と思っています。今は、イアちゃんを迎えるために何冊もしつけの本や犬の心理の本を読んでいます。
何とかイアちゃんが売れてしまう前に引越しをして一緒に暮らせたらと思っています。
そして、もうストレスで尻尾を噛んでぐるぐる回ったりすることのないようにたっぷり愛情をそそいで、このおてんばをとても穏やかで幸せそうな表情の美人の成犬へと育ててあげたいのです。
執筆者:イスラム建築マニア
2005年09月15日