執筆者:イスラム建築マニア
2012年05月15日

4月に「地球の歩き方 イラン」を買ったら、もう居ても立ってもいられないほどイランに行きたくなり、急きょ旅行を計画したのが、GWの約2週間前でした。
一緒に行ったのは、同じくイスラム建築マニアのいつもの友人です。

イランにはイスファハーンのイマーム広場という、その3方を美しいモスクやと宮殿が囲んだ名所があります。ここのイマーム・モスクの正面のムカルナス(天井装飾)は特に美しく、イスラム関連の本ではよく表紙になるほどです。最近も雑誌Penの表紙になっていました。

イランは何となく危ないイメージがあるため、こんな素晴らしいモスクがあるというのになかなか近づけずにいました。モロッコ、チュニジア、トルコ、ウズベキスタン、イエメン・・・(続く)といろいろ旅し、イランを後回しにしていましたが、イスラム建築マニアとしてはイランのイスファハーンを絶対落とすわけにはいきません。他も行きつくしたし・・・そろそろ・・・。
でも、イランに行くには女性は全身を覆い体の線を隠す黒い服がまず要ります。

旅行を計画する少し前にTVの「弾丸トラベラー」で、アブダビのシェイク・ザイド・モスクをやっていました。2009年に完成した、総工費550億円の白亜の巨大モスクです。「こんなものが出来ていたとは!!イスラム建築マニアとしては、これも行かねば!!」と思っていたところだったので、ちょうどつながりました。

まず、アブダビに入ってアバヤ(主にアラブ圏の女性が着る、黒色でゆったりした足首まであるワンピース)を買って、シェイク・ザイド・モスクに行き、その後、買ったアバヤでイランに行く!!しかもアブダビだとおしゃれなアバヤがあるはず。
何と素晴らしい計画!!

というわけで、ワールド・トラベル・アワードで3年連続「最優秀エアライン」を受賞したエティハド航空で、アブダビに行き、アブダビで1泊して、世界に2つしかないといわれる七ツ星ホテルの1つ、エミレーツパレスホテルで、エミレーツパレスカプチーノ(何とバブリーな金箔入り!!)を飲み、今後もアラブ圏に行くことを考え、ちょっとおしゃれなアバヤを買い、フェラーリのテーマパークで世界最速ジェットコースターに乗り、シェイク・ザイド・モスクに行き、ドバイにある世界で一番美しいスターバックス(イスラム建築の中にいるような美しい内装)に行き、ドバイからイランのテヘランに入りました。イランではシーラーズとイスファハーンに行きました。

アブダビのシェイク・ザイド・モスクは、真っ白なねぎ坊主が青空に映え、外観も美しく、モスク内部もとてもきれいです。職人技を感じる昔ながらのモスクとは一味違った、近代的な美しさを持ったモスクです。

イランのイマーム・モスクは残念ながら、改修のための足場が回りに組まれていて、少しがっかりでした。それでも美しいモスクは十分に見えました。
が、最初にこれを見たらとても感動したに違いありませんが、似たようなムカルナスを今までに見すぎているせいか、それよりも格段立派にもかかわらず、こんなのは初めて見た!という感動は減っているようで、念願のイスファハーンでイスラム建築の見すぎの弊害を感じました。

イランは、日本では危ないイメージがあります。また、現在は、個人旅行の女性に対するビザの発給が厳しく個人では行きにくい国です。
テヘランの空港では、別室に連れて行かれ指1本ずつ指紋を取られました。テロでも起きて、日本人の死体が上がった時用かなと思うほどでした。
が、一旦入ってしまうと、とても平和な国でした。国内線においてはパスポートのチェックもなく、ペットボトルも持ち込みOKのゆるゆるです。
旅行中、たまたまイランの大使館に勤務する日本人に会いましたが、平和に暮らしてますとおっしゃっていました。

イランでは女性はチャドルという布(主に黒色)で顔以外の全身を覆い、前で手で合わせ持つ衣装が伝統的な衣装ですが、若い女性はジーンズにひざ上のコートとスカーフといった格好をする人が今では多く、チャドルをまとって真っ黒な格好をする若い人は減ってきています。
むしろ、全身真っ黒で黒いスカーフを巻いた私たちの方が目立っていました。しかも近づくと凝った刺繍のおしゃれなアバヤ。
個人旅行をしている日本人女性、しかもイラン人よりもムスリム(イスラム教徒)っぽい格好、こんな日本人は珍しいのか、旅行中よく「一緒に写真を撮ってほしい。」と言われました。やはりアブダビで買ったのは正解でした。
しかもこのアバヤ、これ1枚あれば他の服が全く要りません。以外と便利です。
イスラム圏では、いくら外国人でもイスラム教を尊重する格好をした方が断然ウケがよく、扱いが全くが違います。「そのような服装はとても好ましい。イスラムを尊重してくれてありがとう。」とお礼を言われたりします。

そして今回この格好のおかげで、すごいものを見ることができました。
イランのシーラーズにある「シャー・チェラーグ廟」です。
それは、世間にあまり知られていないイスラム建築ですが、私の中では「世界の美しいイスラム建築トップ3」に入ります。
内部の天井、壁のすべてを鏡のモザイクで作ってあるのです。ところどころに水色の鏡が配されていて、一層、透明感が増して見えます。もともとイスラムのデザインは幾何学中心なので、中はまるで万華鏡の中のようで何ともいえない美しさです。

そんなものがなぜ世間に知られていないのか?
それはムスリム以外入れず、ムスリムであっても、手荷物検査がありカメラを外で預けなければ入れません。撮影は一切禁止です。絵はがきや内部の写真の載っている本などは全く売られていません。この素晴らしいものが門外不出になっているのです。
「地球の歩き方」でさえ写真もなく、ムスリム以外入れないと書かれ、大したことがないかのような扱いです。
日本人で入った人は殆どいないのではないでしょうか。
これに、非ムスリムである私たちが入れてしまいました。
当初、「ムスリム以外はだめ」と入場を断られました。ところが、別の男の人が現れ、イラン人よりもやりすぎぐらいに黒い衣装に黒いスカーフの出で立ちの私たちを見て、何か言った後、何と特別に入れてもらえることになったのです。
ペルシャ語でしたが、素振りから、「日本からわざわざ来て、しかもあんなにきちんとした格好をしてきているんだから、特別に入れてやってもいいんじゃないか。」と言っているのが分かりました。

そして、その他のチャドルを着ないと入れないようなモスクでも、「その格好ならどうぞ。」と入れたのでした。
今回、結局イランにいた毎日をこのアバヤで過ごしました。あっという間に元を取って、なお余りあるほどのものを得ました。
ガイドブックなどに、外国人旅行者はスカーフだけでもOKのように書かれていても、それを鵜呑みにすると外国人としての旅行しかできません。
イスラムの国ではイスラムの文化を尊重し、愛していることをこちらが全身で伝えると、ムスリムはいつも親しげに話しかけてくれ、助けてくれ、とても親切にしてくます。そしてより深い旅行を楽しむことができます。