最近、ランニングがブームである。私の住んでいる千里中央では、土日祝日には多数のランナーに出会う。日曜日の朝などは少し歩くと二桁のランナーと擦れ違う。このブームにつられてランニングを始める人も多いようで、私の友人の奥さんは、何の前触れもなくいきなりホノルルマラソンに出ると宣言して、その数ヵ月後にホノルルマラソンを完走してきたそうである。私も、土日のどちらかと毎日ではないものの平日の朝にはランニングをしている。ただ、土日(のどちらか)は数キロから10キロ、平日は3キロくらいだし、今年の夏はさすがに暑くてサボっていたから、そう自慢できたものではない。
ランニングの目的は人それぞれであろう。もっとも真剣にしているのはフルマラソンの自己記録を更新するためにトレーニングとして行っている人である。3時間をきるというサブスリーとか4時間をきるというサブフォーという人たちである。私の周りにもこの手の人がいるが、走る距離も長いし、ただ漫然と走るのではなくインターバルトレニングを取り入れたりしている。次に真剣にしているのはフルマラソンに出場するためではあるが、記録は更新できたらいいな程度の人である。その次はフルマラソンは無理としてもハーフマラソンとか10キロマラソンくらいは出たいなという人である。私はこのグループに属する。大会出場を目的とはしないが健康やダイエットのためにという人も多い。私の妻はこのグループに属する。
昨今は大会の数も内容も豊富であり、出場する気があれば自分にあった大会が身近にあるものである。ランナーズという雑誌によると秋から春にかけてほぼ毎日、複数の場所で何らかの大会が全国のどこかで開かれている。それだけの参加者がいるわけだから、ランニングの盛り上がりがわかる。
買い物に行っても、ランニング用品につい目が行く。帽子、バッグ、それからウエアーである。ウエアーもお洒落かつ機能的になっていて、色々と吟味しているだけで飽きない。特筆すべきは下半身を筋繊維にそって補強する目的で締め付けるウエアー、スポーツタイツである。ワコールがイチロー選手をCMに起用して販売し始めた商品が多分最初であろうが、いまや数社がこの市場に参入している。私もロングタイツとショートタイツを持っていて、シーズンではき分けている。ゴルフにも使える優れものである。また、私は、アウトレットモールに行くと、何かしらのランニグ用品を買ってしまう。値段も2000円くらいから数千円くらいと手ごろなことが多いからである。
ところで、ランニングがブームになったのは色々な要因があると思う。デフレというのもその一つであろう。何といっても費用が限りなく0に近いからである。といっても市民大会でもフルマラソンに出るためには1万円前後参加費がかかるそうである。ちなみにニューヨークマラソンは200ドル以上だそうである。私の友人が幸運にも当選したそうだが、都合により出場できなくなっても参加費は返還されないということらしい。それでも他のスポーツに比べて安いことは確かであろう。しかし、デフレというよりは日本の市民社会が成熟してきて先進国の仲間入りをしてきたということが重要だと思う。すなわち、消費を競うことに魅力を感じなくなり、お金をかけずに個人レベルで生活を楽しむようになってきたということである。村上春樹のエッセイにギリシャのエーゲ海の島での生活風景を描いたものがある。そこでは無目的にランニングをする者はおらず(目的を持ったランニングというのは1日に数本のバスに乗り遅れそうになって走っているとかかっぱらいをして逃げているということらしい)、ランニングをしていると島の住民から不思議そうに見られるらしい。日本はその段階をクリアーしたともいえるのだと思う。
様々な理由でランニングが盛り上がっているが、私としてはサングラスなどをかけたりして(時々、石川遼選手や宮里藍選手のように帽子の上につけて)格好よくランニングを楽しみたいと思っている。アウトレットモールのおかげでウエアーの準備も着々と整いつつある。昨年、10キロマラソンには出場し、次の目標は来年2月にエントリーしたハーフマラソンである。そして、いつかはフルマラソンに挑戦してサブフォーが目標だの何だのと言ってみたいと思っている。