最近、クラッシック音楽に凝っている。聞くのはベートーベンが殆どである。楽しみ方は、CDを聞くこと、DVDでコンサートを視聴すること、コンサートに出かけることである。
CDでは、ベートーベンの交響曲9曲とピアノ協奏曲5曲を毎日ランダムにかけて聞いている。たまにピアノソナタが混じることもある。好きな曲は交響曲7番とピアノ協奏曲5番である。
DVDは数枚しかないが週に何回か見ている。クラッシックコンサートのDVDなど何がおもしろいのかと以前は思っていたが、これが結構はまるのである。まず、どの楽器の音が何台くらいから出ているのかCDではわからないが、映像なら楽器の種類や音色を知らなくてもわかる。また、演奏者の年齢や性別がわかるのもいい。さらに、指揮者の動きを見ていると臨場感があってCDに比べてより引き込まれる。カルロス・クライバー(Carlos Kleiber)指揮のベートーベンの交響曲7番は名演奏といわれているそうだが、確かにダイナミックな指揮者の動きと音楽のドライブ感がマッチして繰り返し見てもなかなか飽きない。
コンサートには昨年くらいから出かけるようになった。コンサートは、こちらの都合に合せて聴きたい曲を演奏してくれるわけではないので、まだベートーベンのコンサートには行ったことがない。
クラッシックコンサートになじみのなかった頃には、チケットはすごく高額なのだろうと思っていた。しかし、大阪や兵庫の交響楽団の定期演奏会であれば安い席で2000円から4000円というところである。私の勝手な比較であるが、落語会のチケットが通常3000円前後であることからすれば、あれだけの大人数のプロが演奏することを思えばリーゾナブルであろう。また、大人数のプロが出演する興行という意味でプロ野球はクラッシックコンサートに近いように思うし、チケットの値段も似たようなものといえるであろう。
クラッシックコンサートといえば、私はいつも松本清張原作、野村芳太郎監督の社会派ミステリー映画「砂の器」(1974年製作)を連想する。映画の中にコンサートのシーンがあり、実に効果的に使われているからだ(なぜ、コンサートが重要かは映画のプロットと密接につながっていますので映画を見てください。)。この映画は何度もテレビ放送されて私も子供の頃から見ており、その後も貸ビデオ屋で借りてきて何度も(先日も)見ている。私にとっては日本映画の最高傑作の一つである。そのため、脳裏に焼きついているのであろう。
劇中のコンサートの中で演奏されるのはオリジナルのピアノ協奏曲である。映画の登場人物が作曲したことになっている「宿命」というタイトルの曲(実際の作曲は菅野光亮、音楽監督は芥川也寸志)である。物語のクライマックスで断続的に、また、音量が小さくなったり、大きくなったりしながらほぼ全曲が約1時間にわたり演奏される。それにかぶせて、捜査会議での刑事(丹波哲郎)の謎解き、コンサートの様子、犯人の回想が次々に交代で映し出される。そのもの哀しい旋律は映画に描写された登場人物の哀しみや貧しさ、そしてそれらと裏腹な日本の田舎の風景の美しさととてもよくマッチしている。
クラッシックコンサートに行って、私にとって映画「砂の器」がコンサートの原体験ではなだろうかというようなことをぼんやりと考えながら始まるのを待つ。コンサートが始まる前の軽い興奮と何となくセンチメンタルな感情とともにである。
今年はショパンの生誕200周年であり、次に出かけるコンサートはショパンのピアノソナタである。その次には待望のベートーベンのピアノ協奏曲5番「皇帝」である。楽しみにしている。