イメージに反するかもしれないがトライアスロンをしている人たちは案外インドア派なところがある。
外を走らずに室内で固定された自転車をこいだり、ジムでトレッドミルの乗っかっていたりする。そのほうが時間効率がよく生活のなかに運動を取りこみやすいためだろう。
おそらく当人たちも、室内で運動すること自体はおもしろくないが時間との兼ね合いで割り切って取り組んでいるのではないか。
そのようにいう私もさいきん地味にインドア活動をはじめた。
昨年肩をケガしてしまい、いちど身体も頭もリセットするいい機会だと思って何か月かの間は走らず漕がず泳がずの生活をしていた。
その後ケガがある程度よくなってきて、レースはともかくとしても、気候がよくなるころにツーリングに参加できるくらいまで脚を戻しておきたいという気持ちが芽生えてきた。
ロードバイクでは走行時には案外腕に体重がかからないので平坦・直線を単純に巡航するだけなら腕・肩への負担はさほど大きくない。それでもやはりブレーキをかけたときなど負担が大きくなるだろう。
それでまだしばらくは屋外を走ることは自粛しつつ、リハビリのためローラー台で自転車に乗ることにした。自転車乗り同士では単に「ローラー」といえば通じるが、室内に自転車を据え付けて固定した状態でこぐための器具がある。
私のインドア活動がはじまった。
このローラーであるが、多くの自転車乗りが所有しながら、実際に使用している人は多くない。
その主たる要因は「つまらない」、「暑い」である。
ローラーライフを充実したものとするためにはこの二点に負けない意思の強さか、それに替わる創意工夫が必要である。
まず「つまらない」について。
景色も変わらない室内で自転車をこぐのが退屈なことは容易に想像できるだろう。
この点を克服するため、ひとまず現在の私の場合はDVDで映画をみながらローラーをやっている。
ローラーのことを話すと「何分間のメニューを組んでる?」と聞かれることが多いのだが、それは借りてきたDVD次第である。
ただし、あまり長い作品はしんどい。三國連太郎の若いころの出演作に『飢餓海峡』があるが、DVDを借りてきてから3時間余りの長編であることに気づき、それを見ながらローラーをすることには躊躇した。
私の考えでは、ローラーの供として適しているのはさほど長くなくて(90分からせいぜい100分程度)、テンポがよく適度にアクションがありながらストーリーが単純な作品だろう。アメリカ映画の出番である。
『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』あたりが最適である。
つぎに「暑い」について。
自転車で屋外を走っているときは、いわば自分で風を起こしてその中を走っているため熱が奪われる。このためとくに冬場は防寒・暴風対策が必須である。
これに対してローラーでは自転車が固定されるため熱がこもり、とてつもなく暑い。真冬であったとしても暖房など全く無用で、さらに暑さ対策が必要である。
冬場に窓を開け放してさらに扇風機をセットしても、暑い。小型の工業用扇風機をつかうサイクリストもいるようだが、他の場面では出番がなさそうな代物なので私はもっていない。
もはや「インドア」ではないかもしれないが、家の外にローラーと自転車を引っ張り出すこともある。外でローラーをするときはノートパソコンでDVDを観ている。
パソコンを眺めながらローラーで自転車に乗っているのがおかしいのか、近所の子どもたちがちょっかいをだしてくる。
子ども:おじさん、なにやってるの?
私:自転車しながら映画をみてるんだよ
子ども:自転車してるの?
私:そうだよ
子ども:でもパソコンしてるんでしょ?
私:パソコンで映画をみてるんだ
映画をみながら自転車もしてるんだよ
子ども:映画みてるんだ
私:そうだよ
子ども:でも自転車は?
(以下、省略)
映画が終わったらローラーもおしまい。
多くの場合DVDはTUTAYAからの借り物なので、自転車から降りるとランニングがてら返しにいく。
このように自転車にのった後にランニングを組みあわせることをトライアスリートたちは「ブリックトレーニング」(Brick-Training)といっている。
ブロック(brick)を積み重ねるようにトレーニングするとか、ブリック氏が考案したトレーニング方法だから、とか語源ははっきりしない。
自転車にのった後にランニングをするというのは確かにトライアスロンのレース当日に近い状況ではあるものの、ランニングのフォームをくずす原因にもなるだろうということで、私はもともとはブリックをやらない。
ただ、最初のほうで書いたようにいったんリセットして新しい取り組みをしてみようという気持ちなので、DVDの返却ついでに徐々に取りいれている。
そういうことで、少しずつ生活のなかに走る・漕ぐが戻ってきている。
桜が散るまでには間に合わないかもしれないが、近場でいいので屋外に復帰してツーリングに出かけてみたい。