公正取引委員会は9月8日、談合に関与した企業からその事実について自主申告を受けた結果、当該三社に対し課徴金を免除し、あるいは減額したことを公表しました。
問題となった事件は高速道路のトンネル設備工事を巡る談合です。これについて公取委は今年3月30日メーカーの立入検査に入りましたが、そのきっかけが今回課徴金免除となった三菱重工業の公取委への申告によるものではないか、との観測は業界内であったとのこと。今回の公取委の公表はこれを裏付けるものでした。
このように談合に関わった企業が公取委に自主申告すれば課徴金の減免が受けられるとする制度は今年1月施行の改正独占禁止法が新設したものです。
今回の公表はこの新制度が初めて適用されたことを明らかにしました。
入札談合や価格カルテルなどが明らかとなった場合、公取委は談合などに関与した事業者に対し、違反行為の差し止めなど排除措置を命じますが、それだけでは「やり得」を許してしまうので、課徴金納付を命じてその不当な利益を吐き出させます。
この課徴金は談合などの対象となった商品やサービスの過去3年以内の売上高に一定の算定率を乗じて計算するものですが、1月施行の独禁法改正でその算定率が大幅に引き上げられました。例えば大規模製造業の場合は、これまで6%であったところが10%に引き上げられています。また再度の違反企業には算定率が5割増しになりました。
これと「アメとムチ」のセットで採り入れられたのが、「課徴金減免制度」です。公取委の立入検査前に最初に自主申告した事業者は全額免除が受けられます。今回の三菱重工業です。2番目、3番目は、それぞれ50%減額、30%の減額です。申告が立入検査後だと30%の減額です。今回の石川島播磨重工業と川崎重工業がそうです。
このような制度が功を奏するのか疑問の声もあったようですが、今回申告したのが大企業であったことから今後の定着も予想され、法改正の狙いはあたっていたといえそうです。三菱重工業では橋梁談合事件をきっかけに社内調査した結果、本件が判明したので、公取委に申告したとのこと(三菱重工のホームページより)。ちなみに、今回対象となった談合事件で上記三社以外の受注企業2社は通常の課徴金として合計10億970万円の納付が命じられたとのことです。
課徴金の支払いが命じられた場合、取締役による内部統制が機能していなかったために会社に損害を与えたとして、株主代表訴訟で取締役の賠償責任を問われることが考えられます。取締役としては内部統制の過程で談合やカルテルが判明した場合、それを公取委に申告することによって、会社に与える損害ひいては自ら賠償すべき損害額を最小限に食い止めることもできるのが、この課徴金減免制度です。この制度によって違法行為の隠蔽への誘惑を超える動機付けがなされることとなり、今後もこの制度が適用されるケースは出てくるでしょう。そのことで談合がなくなり、結果、経済が健全化され、国民、消費者の不合理な負担が解消される方向に向かうのは望ましいことと言えます。