<ポイント>
◆ディー・エヌ・エーによるグリーへの不当妨害を認定
◆ライバル社の取引を妨害するのは競争手段が不公正
◆公取委は独禁法順守の行動指針作成などを命令
携帯電話向け交流サイト「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)は6月9日、ライバル会社グリー(GREE)の取引を不当に妨害したとして、公正取引委員会から独占禁止法上の排除措置命令を受けました。
ディー・エヌ・エーは「モバゲータウン」上で、登録会員向けに、会員間で交流できるゲーム(ソーシャルゲーム)を提供しています。
実際にはディー・エヌ・エーがゲームソフト開発業者と契約しており、開発業者が作成したコンテンツにリンクが貼られています。
登録会員は「モバゲータウン」からそのコンテンツに入ってゲームを楽しむことができます。
ディー・エヌ・エーは自社とライバル関係にあるグリーが、ゲームの供給が受けられなくなるよう、グリーにゲームを供給した業者には、自社の「モバゲータウン」にリンクを掲載しないようにしました。
これが公取委が独占禁止法違反と認定したディー・エヌ・エーの行為です。
公取委が独占禁止法違反と認定したのは、ディー・エヌ・エーの行為が「不公正な取引方法」、なかでも「取引妨害」(独占禁止法2条9項6号ヘ)に該当すると判断したからです。
公取委は「競争者に対する取引妨害」として、概ね次のように定めています(一般指定14項)。
「自社と競争関係にある事業者」と「その取引の相手方」との取引について、(1)契約の成立の阻止、(2)契約の不履行の誘引、(3)その他いかなる方法をもってするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。
典型例としてはライバル社の取引先に物理的な妨害を加えて取引を妨害したという事例があります。ライバル社の取引先に、ライバル社と取引しないよう説得したという事例もあります。
独禁法のよってたつ「公正な競争」は、価格や品質で顧客に選ばれることによって成り立ちます。ライバル社とは、商品やサービスの価格や品質で競争するのが本来です。したがって、ライバル社の取引先に不当に働きかけるなどして取引を妨害するのを許しては、競争手段の公正さが確保できなくなる、というのが「取引妨害」が禁じられる趣旨です。
最近の公取委の審決例では、業務用通信カラオケ最大手の第一興商(ブランド「DAM」)が、「JOYSOUND」ブランド(当時)のエクシングに対し、自社の子会社である日本クラウンや徳間ジャパンが管理する楽曲を使用させなくするなどして、エクシングの取引を不当に妨害したと判断した例があります。
公取委は今回の件でディー・エヌ・エーに対し、違反行為を現時点では既に行っていないこと・今後もしないことを取締役会で決議し、その旨ゲームソフト業者やグリーに通知すること、自社の従業員に周知徹底するほか独禁法順守の行動指針を作るなどの措置を命じました。