車両保険特約について考えてみる
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<ポイント>
◆事故の相手方の有無・過失の有無は関係なし
◆免責金額をいくらに設定するのか考える
◆代車の提供を受けるには別途特約が必要であることが多い

自動車をお持ちであれば、自賠責保険はもちろんのこと、多くの方が任意保険に加入すると思います。その際、対物保険や対人保険のような主契約のほか、特約として付けるかどうか検討することが多いのが車両保険です。交通事故の事件を扱っていますと、車両保険の内容について依頼者または相手方から時々聞かれることがありますので、本稿で整理しておきたいと思います。

まず、そもそも車両保険とは何か、どのようなときに支払われるのかについてですが、交通事故や盗難などによって、保険の対象である自動車(以下「被保険自動車」)が壊れたりなくなったりしたときに、保険金が支払われるものです。
事故の相手がいるかどうかは関係ありません。自動車を運転していて誤って電柱や自宅の塀にぶつかってしまっても保険金は支払われます。
また、事故の相手がいたとしてその相手に過失があるのかどうかも関係ありません。相手に過失があろうがなかろうが、保険金は支払われます。

つぎに、車両保険により補償される損害についてですが、①その自動車自体の損害や②事故・事件に付随してかかる費用が補償の対象となります。
①その自動車自体の損害とは、たとえば事故により被保険自動車が壊れてしまったときには、その自動車の事故時の市場販売価格を調査したうえで、その価格よりも低い金額で修理ができるときには(いわゆる分損)その修理金額が損害として補償されることとなり、市場販売価格以上の修理費用がかかるときは(いわゆる全損)その価格が損害として補償されることになります。
もちろん実際には、「免責金額」をいくらに定めているかによって支払われる保険金の額は変わってきますので、保険証券などで確認していただく必要があります。車両保険には「免責金額」というものがありますが、それは何かといいますと、保険会社が支払の責任を免れる金額のことです。免責金額に相当する金額については、保険会社から支払を受けることができません。なぜ「免責金額」というものが設けられているのかといいますと、車体の一部をこするといった小さな事故は多く起こっていますが、保険会社はこのような事故を調査しなくてもよくなるため、手間・費用を抑えることができますし、契約者にとっても保険料が安くなり、双方にとってメリットがあるからです。ただし全損のときは免責金額は差し引かれることなく損害額全額が支払われます。以下具体例を挙げてみたいと思います。
例1 被保険自動車(事故時の市場販売価格200万円)を運転していたところ電柱にぶつけてしまった。修理したところ40万円かかった。保険契約上免責金額は5万円と定められていた。
この事例では、保険会社から35万円(=40万円-5万円)が支払われることとなります。
例2 被保険自動車(事故時の市場販売価格200万円)を運転していたところ電柱にぶつけてしまった。修理見積もりをとったところ、220万円かかることが分かった。保険契約上免責金額は5万円と定められていた。
この事例では、修理金額が事故時の市場販売価格を越えており、全損扱いとなります。したがって、市場販売価格に相当する200万円が支払われます。免責金額5万円は差し引かれません。
車両保険により補償される損害の中身のもうひとつは②事故・事件に付随してかかる費用です。いろいろありますが、典型例は、事故により自力走行できなくなった被保険自動車を修理工場に運ぶためのレッカー代、または、盗難に遭った自動車を引き取るのにかかった費用です。
被保険自動車を修理している時の代車費用については車両保険により当然に支払われるわけではありません。代車提供特約をさらに付ける必要のあることが多いです。
以上、概略を説明させていただきましたが、代車の手配を受けられないことや免責金額を差し引かれることが分かった時点で、知らなかったと仰る方が見受けられます。特約自体は相手の有無や過失の有無にかかわらずに損害を填補してくれるすばらしいものだと思いますが、車両保険特約を付けるとその分保険料がかかることからも、付けるのであればその内容を十分に理解したうえで付けた方がよいと思います。また、以上の説明は一般的なものですので、詳細は保険証券などでご確認ください。