休職についての就業規則の定め方
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<ポイント>
◆休職制度の採用や制度設計は会社の選択
◆メンタルヘルスを意識した休職の制度設計を
◆業務上の疾病の場合退職させられないことに注意

休職制度は、労働者に労務を提供することが不能または不適当な事由が生じたときに、労働関係は存続させつつ労務提供を免除または拒否する制度です。

出向を理由とするものや公職に就くことを理由にする休職制度を定める企業もありますが、特に問題となるのは傷病を理由とする休職制度です。
今回は主に疾病を理由とする休職についての就業規則の定め方について解説したいと思います。

そもそも、休職制度を定めることは法律上の義務ではありません。
まず公務員について休職制度が設けられ、次に大企業がそれに倣い、現在ではほとんどの企業の就業規則に定めがあります。
一度病気になったからといってすぐに解雇されてしまうというのは労働者にとって酷であることから解雇を猶予するために傷病休職制度が設けられたのです。

かつては、休職制度はケガや循環器系・消化器系の疾患などの場合に活用されてきました。
しかし、近年では、うつ病や適応障害、不安障害などのメンタルヘルスを理由とする休業のほうが多いのが現状です。
メンタルヘルスに関わる病気の場合は、継続して休むとは限らず、日によっては体調がよくたまに出社はできるけれどもまた出社できなくなってしまう、というケースもよくあり、労働力として期待できない勤務実態でありながら、これまでの規定では休職させることが困難な場合があります。
また、メンタルヘルスに関わる病気の場合、休職期間満了にあたって、治癒したかどうかの判断が困難であることもよくあります。
また、治癒したと思って出社を開始したところ、また病気がぶり返して休み始めるというケースもよくあり、このような場合に、また一から休職期間を開始させなければならないのか、という問題もあります。
休職制度は企業が自由に設計できる制度でありながら、このような難しい問題を含むため、就業規則中、非常に重要な規定だといえます。

このようなことを踏まえて、労務管理の立場からメンタルヘルスを理由とする休職の取り扱いを意識して、休職についての就業規則例を考えてみました。
企業ごとに最適な制度は異なるとは思いますが、一例として参考になさってください。

第〇条 (休職事由)
会社は、社員が次の各号の1つに該当するときは、休職を命ずることがある。※1
① 傷病による欠勤が1か月以上にわたるとき。
② 傷病による欠勤または遅刻・早退が過去3か月間で所定勤務日数の半分を超えたとき。※2
③ 業務命令により他社に出向したとき。
④ その他前各号に準ずる事由があり、会社が休職させる必要があると認めたとき。

第〇条(休職期間)
休職期間は、次の期間を限度として会社が定める。
① 前条第1号、第2号の事由による場合
勤続1年以上5年未満の者  6か月
勤続5年以上の者      1年
② 前条第3号による場合    出向期間
③ 前条第4号による場合    会社が認めた期間

第〇条(休職期間の取り扱い)
① 休職期間中の給与は無休とする。
② 休職期間は、休職理由が業務上の傷病である場合、出向による場合、その他会社が特に定めた場合を除いて勤続年数には算入しない。

第〇条(休職の終了)
① 休職期間満了までに休職事由が消滅しない場合、退職とする。ただし、休職の理由となった傷病が業務上のものである場合を除く。※3
② 休職期間満了前に休職事由が消滅した場合は、原則として休職前の職務に復帰させる。ただし、事情により休職前の職務と異なる職務に復帰させることがある。
③ 休職者が復職を希望するときは、事前に会社に届け出なければならない。
④ 傷病休職者が復職する場合は、会社が指定する医師の診断に基づき会社が決定する。
⑤ 傷病求職者が復職し、再び同一または類似の事由により出勤後3か月以内に欠勤するに至った場合は、前後の欠勤は連続しているものとみなして通算する。※4 

※1 休職は一定の事象が生じたときに当然に開始するのではなく、会社の判断に基づき開始するものであることを明確にするための規定です。

※2 メンタルヘルスに関わる病気の場合は連続欠勤ではなく、飛び飛びに休む場合も多いのでそのような場合に対応するための規定です。

※3 労基法により業務上の傷病を理由とする休職中の解雇は禁止されています。
   したがって、業務上の傷病の場合、休職期間満了となっても退職させることはできないので、休職事由とはしない就業規則例が多いです。しかし、休職開始の段階では業務上の傷病かどうかはわからない場合も多く、業務上の傷病の場合には休職期間を勤続年数に算入する点と退職させることができない点以外は、業務上の傷病と私傷病をことさらに区別する実益もありません。したがって、原因を区別せずに全ての傷病を休職事由とすることとしました。

※4 メンタルヘルスに関わる病気のときは復職後再発する場合が多いので、そのような場合に何度も復職と休職を繰り返すことを許さないための規定です。