部下からのハラスメント(逆ハラスメント)について
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<ポイント>
◆部下から上司への攻撃もパワハラとなることがある
◆通常はパワハラではなく業務命令違反等として取り扱う
◆行為者の異動や懲戒処分、解雇等もありうる

 

部下から上司への攻撃的な言動(ハラスメント)、いわゆる逆ハラスメントが問題になるケースが増えています。
具体的には、上司の通常の業務指示をハラスメントと主張したり、上司の指示に従わなかったり、上司の能力不足を攻撃する、上司に暴言を吐くなどがあります。
私もこの種のご相談を受けることは珍しくありません。

まず部下から上司への攻撃的な言動がパワーハラスメントになりうるかが、問題となりますが、パワーハラスメントとは、(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1)~(3)までの要素をすべて満たすものをいいます。
部下が上司に対して優越的な地位にあるのかというのが(1)の要件を満たすのかの関係で問題となりますが、「(1)優越的な関係を背景とした言動」とは、業務を遂行するに当たって、職務上の地位や人間関係などにより、当該行為を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われることをいうとされています。
具体的には、職務上の地位が上位の者による言動のほか、同僚又は部下による言動で、業務上必要な知識や豊富な経験により、その者の協力をえなければ業務の円滑な遂行が困難であるものや、同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの等も含まれるとされています。
そのため、部下からの攻撃的な言動(ハラスメント)もパワーハラスメントになりえます。
とはいえ、実際には、部下が上司に対して優越的な地位にあることを立証するのは困難であることが多いため、パワハラとしてではなく、上司からの業務命令違反や、職場の風紀や秩序を乱す行為として取り扱うことがほとんどです。
このようなハラスメント行為の存在が認定された場合には、就業規則に基づき、行為をした部下が懲戒処分されたり、解雇となったりするケースもあります。

このような逆ハラスメントがなぜ起きるかですが、上司の能力不足、部下の側の権利意識の高まり、ハラスメントの概念が一般化したことにより指導について自信のない上司が増えていること、上司と部下で年齢や仕事の知識について逆転現象が生じていること、部下の側のメンタルの不調などが考えられます。

このようなことが起こった場合には、上司なのだから、責任をもって部下を指導しなさい、と突き放すのではなく、事実関係を調べて就業規則に違反するような組織にとって不都合な言動があると判断した場合には、組織として積極的に関わっていくことが必要です。
その程度がはなはだしいものでなければ、部下の具体的な言動について、どの点が問題なのかを指摘し反省・改善を促すことになります。
上司の側にも体調面や能力面等の問題があると思われる場合にはどちらかを異動させるということも検討する必要があります。
程度がはなはだしい、また、会社からの指導にもかかわらず繰り返し行われているというような事情があれば、懲戒処分や解雇も視野に入ってきます。いきなり解雇するのではなく、退職勧奨を行うことも考えられます。
解雇する場合には、解雇が有効となるのかについて慎重に検討する必要があり、弁護士に相談されることをお勧めします。

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