2024年株主総会及び今後の動向について
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<ポイント>
◆フルセットデリバリーを行う会社は半数近くに減少
◆プライム市場では3割の会社がハイブリッド参加型で総会を開催

 

商事法務から株主総会白書2024年版(2024年12月5日号)がでました。2024年はコロナ禍が終息し、上場会社の株主総会も正常な運営に戻ったものといえると思います。
ただ、コロナ禍を経て従前と異なる対応をするようになったり、株主総会資料の電子提供制度により新たな対応をするようになったりしたこともあります。
上記白書からいくつかの項目をピックアップして変化を概観したいと思います。

まず、株主総会資料の電子提供制度についてです。
上場会社は、原則、株主総会の日の2週間前の日までに株主総会の日時・場所と総会の目的事項(報告事項・決議事項)と株主総会資料をアップロードしたサイトのURL等を記載した書面(いわゆるアクセス通知)を株主に送付すること、株主総会の日の3週間前の日までに総会資料をアップロードすることになります。
この電子提供措置の開始日は、上記法定期限より1日前の22日前が最多数で、法定期限当日である21日前、23日前を含めた3日間でほぼ半数という結果は2023年総会と同じでした。
掲載したウェブサイトについては、自社HPと取引所ウェブサイトには掲載している会社の割合がほぼ9割という結果も2023年総会と同じでした。これは、自社HPと取引所ウェブサイトのどちらかのサーバーのダウン等があっても他方が閲覧可能であれば電子提供措置の中断が生じないので、リスク軽減が図れているということだと思います。
株主に提供する資料として、従来と同様の資料の送付(フルセットデリバリー)が行われたのは55.2%となり、2023年総会の64.8%から大幅に減少しました。
アクセス通知のみを郵送したのは10%となり、2023年総会の6.1%から相当に増加しました。
このような傾向は予想されていたものですが、今後も進んでいくものと思われます。
アクセス通知に加えて資料提供をした会社(フルセットデリバリーをした会社を除く)の殆どが参考書類を送付したようで、逆に監査報告は送付していないようです。
総会資料の電子提供制度においては、インターネットを利用することが困難な株主のために、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができることとなっていますが、議決権基準日までに書面交付請求がされなかった会社の割合は21%で2023年総会の15.3%より増えており、電子提供措置の定着が進んでいることがうかがわれます。

次に電磁的方法による総会運営です。
電磁的方法による議決権行使を採用した会社は9割近くあり、2023年総会より少し割合が増えています。今やスタンダードとなっていると言っていいと思います。
バーチャルオンリー型総会を実施した会社は、2000社弱の回答のうち19社であり、2023年総会の13社より増えているものの、殆ど実施されていないといえます。
しかし、ハイブリッド出席型・参加型を実施した会社は合わせて20%で、2023年総会の21%より微減という状況です。回答数が異なることからほぼ横ばいといってもいいかもしれません。
ただ、ハイブリッド出席型はわずかで、殆どがハイブリッド参加型です。なお、プライム市場では、回答のあった会社のうちの29.4%がハイブリッド参加型で実施しており、その殆どが株主のみにライブ配信をしているようです。

コロナ禍の下で監査役等からの監査報告を省略する会社は相当数ありましたが、2024年総会でも約4分の1の会社で行われておらず、その傾向は2023年総会と同じです。
動議の提出については2.6%であり、2023年総会の2.3%より少し増えているようです。また、退場命令に関して、秩序を乱すような事態は生じなかったとした会社は、2023年総会96.8%に対して2024年総会は95.7%であり、そのような事態が生じた会社のうち7社(2023年総会と同数)で実際に退場命令を発したようです。
動議の提出や秩序を乱す事態の増加は、株主総会に多数・多様な株主が参加していることを反映しているのかもしれません。そうであれば、この傾向は続くのかもしれません。