<ポイント>
◆企業を対象にした詐欺的な求人広告が流行している
◆無料期間経過後に突如として不相当な求人広告料を請求される
◆不相当な求人広告広告料の請求にはいくつかの対抗策が存在する
最近、複数の顧問先企業から求人広告に関して同種の相談を受けました。その相談とは、概ね次のようなケースです。
・当然、求人広告会社の担当者を名乗る者から電話があり、「求人広告をインターネットに無料で掲載をしないか」と勧誘される。この際、同担当者は、もっともらしい理由を付けて、無料であることを強調する(例えば、求人広告事業を立ち上げたところで、実績作りに協力してもらうので無料で良い、など)。
・この勧誘に応じると、無料掲載の申込書が届く。申込書を受け取った企業担当者は「無料」と信じて、精査せずに申込書に署名(記名)・押印して返送する。
・しかし、その申込書には、小さな文字で、かつ、分かりづらい文章で「無料期間経過後には自動で有料ブランに切り替わる。」という記載がある。
・無料期間経過後に不相当に高額な求人広告料を請求される。
このような詐欺的な求人広告は昔から存在するようですが、いまなお流行しているようなので、改めて注意喚起をしておきます。
この事案の厄介なところは、求人広告料を請求することができる体裁が一応整えられている点です。すなわち、上記のとおり、申込書には、認識しづらいものの、「無料期間経過後には自動で有料ブランに切り替わる。」という記載があります。また、実際に求人広告サイトは存在し、申し込みをした会社の求人広告も掲示されているのです(ただし、その求人広告サイトは全く認知度のない、求人効果があるとは考え難いものですが)。
このように体裁が整っていることから諦めて請求に応じる被害者も多いと思います。しかしながら、このような詐欺的な求人広告事案については、法律的な対抗策がいくつか考えられます。例えば、錯誤(簡単に言えば勘違い)により契約を締結してしまったとして契約を取り消す方法(民法第95条)、求人広告会社の詐欺により契約を締結してしまったとして契約を取り消す方法(民法第96条)、契約が公序良俗に反するので無効と主張する方法(民法第90条)などです。実際に、同種の事例で、詐欺取消しが認められた事例も存在します(那覇簡裁令和3年10月21日判決など)。