<ポイント>
◆吸収合併の手続きを簡略化する2つの制度が存在する
◆略式合併は議決権に着目した制度である
◆簡易合併は合併対価に着目した制度である
吸収合併を行う際には、通常、吸収存続会社(以下単に「存続会社」といいます。)および消滅会社(以下単に「消滅会社」といいます)のいずれにおいても株主総会の承認が必要になります。しかし、かかる承認決議を不要とし、手続きを簡略化する制度があります。それが、「略式合併」と「簡易合併」です。
1 略式合併について
略式合併とは、以下の場合に、以下の会社における承認決議が不要になる制度です。
(1)存続会社が消滅会社の議決権の90%以上を保有している場合
→消滅会社の承認決議が不要に。
(2)消滅会社が存続会社の議決権の90%以上を保有している場合
→存続会社の承認決議が不要に。
ある会社が別の会社の議決権の90%以上を保有している場合、議決権を保有している会社を特別支配会社といいます。特別支配会社は被支配会社を実質的にコントロールしているので、被支配会社の承認決議は不要という考え方です。
2 簡易合併について
簡易合併とは、簡潔に言えば、消滅会社の株主に交付される合併対価が存続会社の純資産額の5分の1を超えない場合に、存続会社での承認決議が不要になる制度です。合併対価をどのように計算するかについては、会社法第796条2項1項各号に定められていますが、ここでは割愛します。
存続会社の純資産額に比べて合併対価が小さい場合、存続会社の株主に与える影響も小さく、承認決議は不要という考え方です。
ただし、上記の要件を満たしていても、簡易合併が認められない例外が存在します。その例外は以下のとおりです。
(1)存続会社が公開会社ではなく、かつ、合併対価が譲渡制限株式である場合
(2)存続会社に合併差損(※)が生じる場合
※存続会社が書面から承継する債務額及び資産額、存続会社から消滅会社に交付される合併対価を考慮した場合に存続会社が損失を被ること(詳細は割愛)
(3)議決権を行使することができる株式総数のうち6分の1を超える株式を持つ株が反対する場合
以上が、略式合併・簡易合併についての概略です。あくまで概略であり、例外的なルールも存在することから、略式合併・簡易合併について検討されている企業は弁護士にご相談下さい。