区分所有マンションにおける会計について 3 
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<ポイント>
◆管理費等に想定外の不足が生じた場合、組合員に対して必要な金額の負担を求めることができる
◆特別の管理をおこなうにあたり修繕積立金だけでは足らなければ借入れを行える

今回は、マンション標準管理規約(単棟型)(以下「標準規約」といいます)で定められている会計のうち、管理費等の過不足、預金口座の開設、借入れについてお話しします。

まず、収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度の管理費に充当する、とされています。
逆に管理費や修繕積立金に不足を生じた場合には、管理組合は組合員(=区分所有者)に対し、各組合員の共用部分の共有持分に応じて、その都度必要な金額の負担を求めることができる、とされています。
総会決議も理事会決議も必要とされていないので、予測できなかった不足額が生じ、直ちにその不足額を各組合員から徴収しなければ会計が破綻するおそれのある場合に限定すべき、と抑制的に解されています。
具体的には、総会において支出予算の承認決議を得たうえで大規模修繕工事を進めたところ、想定外に工事費用が生じることが明らかとなったような場合です。
当初から修繕積立金だけでは足らないことが分かっているのであれば、予算の変更にや追加徴収について総会決議を経るべきです
(収支予算の変更については区分所有マンションにおける会計について – 弁護士法人栄光 栄光綜合法律事務所 (eiko.gr.jp)をご参照ください)。
https://www.eiko.gr.jp/lawcat/7-3/

次に、預金口座の開設についてお話しします。
管理組合は、会計業務を遂行するため、管理組合の預金口座を開設するものとする、とされています。
管理組合が法人化されていれば管理組合名そのものの名義で口座を開設できますが、法人化していなければ「〇〇〇〇管理組合理事長△△△△」という名義で口座を開設することが一般的と思われます。
なお、標準規約コメントをみますと、預金口座に係る印鑑等は、施錠の可能な場所(金
庫等)に保管し、印鑑の保管と鍵の保管を理事長と副理事長に分けるなど、 適切な取扱い方法を検討し、その取扱いについて総会の承認を得て細則等に定めておくことが望ましい、とされています。

最後に、借入れについてお話します。
管理組合は、以下の業務(特別の管理)を行うため必要な範囲で借入れができる、とされています。
1.一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
2.不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
3.敷地及び共用部分等の変更
4.建物の建替え及びマンション敷地売却に係る合意形成に必要となる事項の調査
5.その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
もともとこれらの管理費用に充てるために修繕積立金が積み立てられていますが、それを取り崩すだけでは足らない場合に借入れを行えるということです
(修繕積立金についての詳細は区分所有者が管理組合に納入すべき費用2 – 弁護士法人栄光 栄光綜合法律事務所 (eiko.gr.jp)をご参照ください)。
https://www.eiko.gr.jp/lawcat/7-3/
なお、借入をおこなうには総会決議が必要とされています。

参考になれば幸いです。