少し前にプレゼンテーションについて簡単な授業をうけたのですが、人前で話す練習には、自分の好きなもの、ことの話をすると良いそうです。好きなものの話をするときは自然と熱が入り、伝えたい気持ちが高まり、ほどよく緊張感がやわらぐからです。
ということで、はじめてのエッセイになりますので、好きなことの話をしようと思います。
DIYをします。本人側からはDIMです。
きっかけは10年前の自宅リフォームでした。ちょうどそのころセルフリフォームのための壁紙やクッションフロアなどを販売しているお店を知って興味を持ち、セルフリフォームやDIYについて読んだり調べたりするようになりました。そこへ降ってわいたリフォーム話。業者さんに石膏ボードと水回り、フローリング等を施工していただき、装飾のない箱のような土台を作っていただきました。
そこから自分で内装施工です。
ペンキを塗り、粉漆喰に色を付けて練り、その漆喰をこてで施工し、壁紙を貼り、クッションフロアを貼り、タイルを施工しました。玄関脇の壁は憧れの羽目板張りです。マイ刷毛、マイこて、マイドリルを持ち、気分はすっかり職人です。
自分のためだけに自分一人で進めるため、こだわりの配色に待ったをかける人もおりません。押し入れの中はピンクの漆喰、アクセントに赤いダマスクス模様の壁紙を貼りました。施工途中での突然の色変更や素材変更も自由です。寝室の床に貼ったクッションフロアが余ったので、階段に貼ってみたところ、小さい幾何学模様のためにめまいをもよおす階段になりました。安全にかかわることだからと手すりは業者さんにお願いしておいて良かったです。
初めは恐かった脚立にも慣れ、漆喰のスムースな質感にうっとりするものの、壁の面積も床の面積も天井の面積にも限りがあります。ましてや小さいながらも楽しい我が家はとても小さい我が家ですから。
そこで、あとのお楽しみにと手を入れるべき内装の一部を残し、次は木工にまい進しました。
欲しいものがあるかぎり木工に終わりはありません。そしてそこにはたくさんの楽しみと達成感がついてきます。木工には達成感ポイントが多いのです。
まずは、欲しいものをなんとなく絵で描いて構造を考えます。とくに既存のものを参考にした場合、学生時代に無器用だと笑われた私のつたない技術では作成が無理なものもたくさんあります。そこで、理想に近い形を私の技術で再現できるように組み方を考えます。アレンジした完成図が出来上がれば達成感。
次に完成図から必要なパーツを書き出します。厚みを足したり引いたりしながら、すべてのパーツを一覧表にできたところでこれまた達成感。
そこから木取り図づくりです。私はこの工程がパズルのようで好きです。大きな合板や長いツーバイ材から極力無駄の出ないようにかつカットの数が省けるように裁断箇所を考えます。パーツを木材にあてはめて、きれいに収まるとザ・達成感。
余りがでなければ経済的にも助かります。余りがでるときは細かな端材がでないように配置して、大きく余った木材は次の作品作りのためにキープしておきます。
そして木取り図を持ってホームセンターへ。カットはホームセンターでしてもらえば、あとは組立家具と同じです。
ヘッドだけ変えればドリルドライバーにも電動のこぎりにもサンダーにもなるという変幻自在な電動工具ブラックアンドデッカーマルチエボを相棒にダダダダとねじを打ち込みます。
組む順番を間違えるとドリルドライバーのヘッドがすきまに入らずねじが締められないなどというトラップもありますが、作品が出来上がればもちろん苦労を上回る達成感。作ったものの高さや幅が、部屋のすきまや窓枠ラインと一致したときはとても気持ちがいいものです。
買った組立家具ならば少しの不備でも気になりますが、自分で作れば傷も愛しい。愛着がわくので、大事にできます。
けれどもどうしても不要になれば、木材なので解体して別のものにすることもできます。
そうして作った自作の家具にはDIYならではの良さが詰まっています。
まずはなんといってもジャストサイズ。
洗面所には「すきまぴったり収納棚」。ジャストサイズのポイントは測ったすきまの幅から2ミリ小さく作ること、または直接その場に木材をあてて印をつける現物合わせで作ることです。業者さんに入れてもらった洗面台と同じ高さでかつ同じパイン材で作ったので、初めから洗面所に設置されていたかのように収まっています。
自分都合で用途を組み合わせた兼用家具も作れます。台所には分別用ゴミ箱がぴったり収まる「キッチンカウンター兼水槽台」。市販のお手頃価格カウンターでは強度が気になるところですが、家の骨組みにも使われるツーバイ材と補強金具を使用して作れば、水を含めて70キログラムになる60センチ水槽を置いても不安感なし。可愛いミナミヌマエビもピンクラムズホーンもご機嫌です。さらに甘えん坊猫が飛び乗っても大丈夫なので、彼も水槽の隣に座り水槽も炊事もゆっくり観察することができます。
買えないものも作れます。玄関には写真で見たアンティーク家具を参考に「ベンチ兼玄関目隠し兼コートハンガー」を設置。
わが家の構造上、玄関をあけると屋内がすっきり丸見え。そこで玄関正面にベンチを作り、上部にコート用のフックを取り付けました。フックを付けた木材の裏にカーテンポールを設置して、カーテンクリップでお気に入りの布をはさんで外からの目隠しに。カーテンクリップを使えば目隠し用の布もすぐに取り替えられて、ちょっとした気分転換も簡単です。
お天気のいい日には玄関窓から入る太陽光を目当てにベンチでわが家の猫がくつろぎます。ふいのお客様も靴を脱がずに座っていただくことができますし、おうちに上がられるお客様のブーツの脱ぎ履きにも活躍します。ただし、お召し物に猫の毛はつきます。
家の壁面と合体させた作り付け家具を作成することもできます。購入するとかさばるイーゼルも、壁にツーバイ材をとりつけ、キャンバス落下防止用に端材をつければあっという間に「壁一体型キャンバス台」に。
専用のアトリエがある方はともかく、大きなキャンバスの置き場所には悩まされるものです。これが簡単に解決できます。
イーゼルを出す手間も省け、使用後しまう必要もありません。いつも目に入るので、サイズ感を踏まえた構図も考えやすいですし、放置してしまうこともなくなります。いざ絵を描く際には、ペンキ塗りの際に余ったテープ付き養生シート“マスカー”をキャンバスの後ろに貼れば壁も汚れません。絵の制作途中でも、絵の具が乾いていなくても猫に踏まれることなくキャンバスをそのまま置いておけます。ただし、部屋に舞う猫の毛はつきます。
「電気窯用猫侵入防止柵兼乾燥台」などという、必要なのにどこにも売っていないものも作ることができます。
ピザは焼けないけれどお皿は焼ける電気窯を持っています。そして火を入れたときに限って窯の後ろに入ろうとするいたずら大好き甘えん坊猫もいます。彼はコンセントもがぶがぶするので私は悲鳴をあげます。即やけどなどということはなかったにしても万が一が恐すぎます。そもそもコンセントがぶがぶも窯使用中15センチメートル以内侵入も日本電産の取扱説明書できつく禁止されています。だからといって猫にどれだけ強く言っても伝わらず、私が怒れば怒るほど、構ってもらえる満足感からますますはしゃいでしまう彼を止めることに注力するより、さっと柵をつくるが策です。窯の取説にしたがって上方20センチメートル以上あけたうえ、製作中の作品や道具の置き場所となる棚もつくれば一石二鳥ではありませんか。
これで安心して電源オン。ただし窯下にファンがついていますので、事前に猫の毛の掃除は必須です。
この窯用柵に関しては、さらに長めのビニールカーテンを設置して、「電気窯用猫侵入防止柵兼乾燥台付猫の毛アンドおがくずカバー」に進化の予定です。
こうして書いているとDIY熱が高まってきました。
幸い使えそうな端材も十分あるうえ、次に作るものも決まっています。文章も長くなりましたし、語りたいことはつきませんが、この辺で切り上げて次作「生地収納付製図台兼裁断台兼アイロン台」の設計にとりかかろうと思います。
はじめまして、紙魚です。
お察しのとおり趣味は読書です。