スカイプレミアム事件の送金代行業者に対する敗訴判決について
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<ポイント>
◆送金代行業者に対する訴訟
◆敗訴判決の意味

 

1 スカイプレミアム事件について
これまで何度かメルマガで取り上げているスカイプレミアム事件について改めて話題にします。
繰り返しになりますが、証券取引等監視委員会が、SKY PREMIUMINTERNATIONAL PTE. LTD.(シンガポール共和国、金融商品取引業の登録等はない。以下「スカイ社」という。)らに対して、金融商品取引法違反行為(無登録で、投資一任契約の締結の媒介を業として行うこと)の禁止及び停止を命ずるよう求める申立てを行い、2021年12月8日に、東京地方裁判所より、申立ての内容どおりの命令が下されました」(以下「スカイプレミアム事件」といいます。)。
【SESCサイト】 https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2021/2021/20211208-1.html
この件で被害にあわれた方が、各地で訴訟提起をされているようです。

2 送金代行業者に対する訴訟
(1)その訴訟提起の中の一つに送金代行業者に対する責任を追求する訴訟が東京地方裁判所に提起されていましたが、被害者(原告)の請求を認めない判決がでたようです。本稿執筆時点では、判決内容を確認できていませんが、東京地方裁判所は、民法709条の不法行為が成立するために必要な要件について検討した結果、送金代行業者において、今回の被害者から送金代行業者への送金が金融商品取引法に違反する行為又は投資詐欺に係るものであることを認識し、又は認識することが可能であったということはできず、送金業者に過失又は重過失があったということはできない、と判断したようです。
被害者の方は所定の手続を経ることにより東京地方裁判所に判決内容の謄写を請求することができます。また、裁判所の判断によりますが時期が来れば裁判所の次のサイトで判決内容が公開されるかもしれません。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
(2)敗訴判決の影響について
集団訴訟のデメリットでもありますが、訴訟準備が十分にできないまま判決の段階に至ってしまうと、不本意な敗訴判決がでてしまうことがあります。少なくとも被害者にとっては不利な先例が一つ出来上がってしまったことになります。
他方で、今後、同じく送金代行業者に対して訴訟提起しても、送金代行業者は、この東京地裁判決を引用して自らに不法行為責任がないことを主張することになります。当然ですが、裁判官がした判断ですから、責任を否定した判断に全く理由がないとは考えられませんので、他の裁判官の判断への悪影響も懸念されます。
これから送金代行業者も含めて訴訟提起する場合は、送金代行業者が「被害者から送金代行業者への送金が金融商品取引法に違反する行為又は投資詐欺に係るものであることを認識し、又は認識することが可能であったということ」を具体的な事実・証拠に基づいて反論しなければ、裁判所から同じ判断がなされる可能性が高くなります(なお、送金代行業者(収納代行業者)に対する責任を認めた裁判例として東京高裁平成26年9月17日判決、東京地裁平成29年5月10日判決など)。
さらに言えば、この地裁判決が東京高等裁判所でも維持されると、送金代行業者に対する責任追求が困難となり、被害者にとってより深刻な影響があるのではないかと考えます。
いずれにせよ、スカイ社を巡る事件については、これからなされる判決の内容に注目する必要があります。

3 なお、スカイ社の役員やエージェントに関しては個別事情があり別途の検討が必要かもしれませんが、法人であるスカイ社に対しては2016年10月1日に施行された「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(平成25年法律第96号)による対応も考えられるようにも思われます。しかし、スカイ社を含め今回のスキームに関与する会社の多くが外国法人であるからなのか、現時点では特に適格消費者団体による訴訟提起の対応はされていないようです。実態としては日本人が運営していても、運営主体が国境を超えた外国法人である事案については、同制度による対応にも限界があるのであろうと思われます。