<ポイント>
◆中小企業における60時間超の割増賃金率の変更
◆男性の育児休業取得状況の公表義務(一部企業のみ)
◆給与のデジタル払いが可能に
1 60時間超の割増賃金率の変更
2023年(令和5年)4月1日から、1か月に60時間を超えて時間外労働をさせた場合は、その超えた部分の労働については、50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
2023年3月31日までは、残業代について50%以上の割増賃金の支払義務は大企業のみに課せられていましたが、この支払義務を負う企業が全ての企業に拡大されました。
これに伴い、就業規則や給与規程、労働条件通知書、労働契約書等の変更が必要になる場合がありますので、注意が必要です。
なお、1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、労使協定を締結することで引上げ分の割増賃金の代わりに、有給の休暇を付与することもできます。この休暇を「代替休暇」といいます。
2 男性の育児休業取得方法の公表義務
2023年4月1日から、育児・介護休業法の改正により、従業員が1,000人を超える企業の事業主は、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられました。
「常時雇用する労働者」とは雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指します。
公表内容は、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)における次の(1)または(2)のいずれかの割合です。
(1)育児休業等の取得割合
育児休業等をした男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数
(2)育児休業等と育児目的休暇の取得割合
(育児休業等をした男性労働者の数 + 小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度 を利用した男性労働者の数 の合計数)÷ 配偶者が出産した男性労働者の数
公表の方法ですが、インターネットなどの一般の方が閲覧できる方法で公表する必要があります。
厚生労働省は、その運営するウェブサイト「両立支援のひろば」による公表を推奨しています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf(厚生労働省のホームページ)
3 給与のデジタル払いが可能に
賃金の支払方法については、労働基準法により定められた通貨による支払のほか、厚生労働省令により、労働者の同意を得た場合には、銀行その他の金融機関の預金又は貯金の口座への振込み等によることができることとされています。
今般、給与受け取りについて、銀行振り込み以外の方法にも一定のニーズがあるとして、企業側が、労働者の同意を得た場合に、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払(いわゆる給与のデジタル払い)ができることとなりました。
2023年4月1日から、資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行うこととなっていますので、これから普及していく可能性があります。
個人的にはまだ積極的にこの制度を利用したいとは思いませんが、今後の状況を見守りたいと思います。