非居住者や外国法人(以下「非居住者等」といいます。)に対して、源泉徴収の対象となる「国内源泉所得」を支払う場合には、その支払の際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない場合があります。したがって、取引において、非居住者等に何らかの支払をする場合には、その対価が源泉徴収の対象となる「国内源泉所得」に該当するかを確認する必要があります。
非居住者等に以下のような支払をする場合には、その対価が源泉徴収の対象となる「国内源泉所得」に該当することがあります。
なお、非居住者等の居住地国と日本との間で租税条約が締結されている場合には、その租税条約の定めるところにより課税が軽減又は免除され、源泉徴収が不要となる場合などがあります。
(注1)「非居住者」とは、日本国内に住所も1年以上の居所も有しない者をいいます。
(注2)「外国法人」とは、日本国内に本店も主たる事務所も有しない法人をいいます。
(注3)「支払」には、現実に金銭を交付する行為のほか、元本に繰り入れ又は預金口座に振り替えるなどその支払の債務が消滅する一切の行為が含まれます。
1.土地等の取得対価を支払う場合
非居住者等から、日本国内にある土地や建物等の不動産を取得する場合は、その対価の支払の際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
(注)個人が、自己又はその親族の居住の用に供するために取得した土地等で、その土地等の対価の額が1億円以下である場合は、その個人が支払うものについては源泉徴収をする必要はありません(法人が取得して対価を支払う場合には、1億円以下であっても源泉徴収をしなければなりません。)。
2.不動産の賃借料等を支払う場合
非居住者等から、日本国内にある土地や建物等の不動産を借りる場合は、その賃借料を支払う際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
(注)個人が、自己又はその親族の居住の用に供するために土地や家屋を借りる場合に支払うものについては源泉徴収をする必要はありません(法人が借りて賃借料を支払う場合には、源泉徴収をしなければなりません。)。
3.利子等を支払う場合
非居住者等に対して次に掲げる利子等を支払う場合は、その支払の際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
①内国法人が発行する債券の利子、外国法人の発行する債券の利子のうち当該外国法人が国内において行う事業に帰せられるもの、国内にある営業所等に預け入れられた預貯金の利子など
②国内において業務を行う者が、非居住者等からその国内業務に関する資金の貸付け等を受けることにより支払う利子(一定のものを除きます。)
4.配当等を支払う場合
内国法人が、非居住者等に対して剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配などを支払う場合は、その支払の際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
5.工業所有権、著作権等の使用料等を支払う場合
国内において業務を行う者が、非居住者等に対して支払う次に掲げる使用料又は譲渡による対価のうち、その国内業務に係るものを支払う場合は、その支払の際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
①工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料又はその譲渡による対価(工業所有権等の実施、使用、採用、提供若しくは伝授又は工業所有権等に係る実施権若しくは使用権の設定、許諾若しくはその譲渡の承諾につき支払う対価の一切をいいます。)
②著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含みます。)の使用料又はその譲渡による対価(著作物の複製、上演、演奏、放送、展示、上映、翻訳、編曲、脚色、映画化その他著作物の利用又は出版権の設定につき支払う対価の一切をいいます。)
③機械、装置又は用具(車両、運搬具、工具、器具及び備品)の使用料
6.給与等の人的役務の提供に対する報酬等を支払う場合
非居住者に支払う給与その他の人的役務の提供に対する報酬等のうち、国内において行った勤務その他の人的役務の提供に対するものを支払う場合は、その支払の際に所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
(注1)内国法人の役員としての勤務で国外において行うものについても源泉徴収をしなければなりません(その役員としての勤務を行う者が、同時にその内国法人の使用人(海外にある支店などの長)として常時勤務を行う場合のその役員としての勤務に対するものについては源泉徴収をする必要はありません。)。
(注2)非居住者に支払う退職手当等については、居住者であった期間に行った勤務に対応する部分が源泉徴収の対象となります。