<ポイント>
◆敷地や共用部分等は、原則として各区分所有者でなく管理組合が行う
◆専有部分の設備の管理についても、管理組合が行える場合がある
◆理事長は、災害等緊急時に敷地や共用部分等の必要な保存行為を行える
今回は、敷地及び共用部分等の管理についてお話ししたいと思います。
標準管理規約(単棟型)では、敷地や共用部分等(共用部分や付属施設のこと)の管理は、原則として管理組合がその責任と負担において行うとされています。
ただし、「バルコニー等」の保存行為のうち「通常の使用に伴う」ものについては、専用使用権を有する区分所有者がその責任と負担において行わなければならないとされています。
「バルコニー等」とは、規約別表第4で掲げられているバルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭、屋上テラスのことです。
「通常の使用に伴う」保存行為とは、たとえばバルコニーの清掃や窓ガラスが割れた時の入替え等のことです。
また、標準管理規約(単棟型)では、区分所有者は次のいずれかの場合を除き、敷地や共用部分等の保存行為を行えないとされています。
(1)上述した、バルコニー等の保存行為のうち通常の使用に伴う場合
(2)あらかじめ理事長に申請して書面(または電磁的方法)による承認を受けた場合
(3)専有部分の使用に支障が生じている場合に、その専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が緊急を要するものであるとき(コメントでは具体例として、台風等で住戸の窓ガラスが割れたときに、 専有部分への雨の吹き込みを防ぐため、割れたものと同様の仕様の窓ガラスに張り替えるというようなケースが挙げられています)
これらは、共用部分や区分所有者の共有する敷地・付属施設の保存行為は各共有者ができるが規約で別段の定めも可能と区分所有法で定められていることを受けて、別段の定めがなされたものです。
なお、標準管理規約(単棟型)のコメントをみると、バルコニー等の管理について次のとおり補足されています。
(1)計画修繕等(経年劣化への対応を含む)は、管理組合がその責任と負担で行う。
(2)バルコニー等の劣化であっても、長期修繕計画作成ガイドラインで管理組合が行うものとされている修繕等の周期と比べて短い期間で発生したものであり、かつ、他のバルコニー等と比較して劣化の程度が顕著である場合には、特段の事情がない限り、当該バルコニー等の専用使用権を有する者の「通常の使用に伴う」ものとして、その者の責任と負担で保存行為を行う。
(3)(2)の場合であっても、結果として管理組合による計画修繕の中で劣化が解消されるのであれば、管理組合の負担で行われることとなる。
(4)バルコニー等の破損が第三者による犯罪行為等によることが明らかである場合の保存行為の実施は、「通常の使用に伴わない」ものであるため、管理組合がその責任と負担で行う。ただし、 同居人や賃借人等による破損については、「通常の使用に伴う」ものとして、当該バルコニー等の専用使用権を有する者がその責任と負担で行う。
また、標準管理規約(単棟型)では、専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を、共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、総会の普通決議を経て管理組合が行える、とされています。コメントをみると、「共用部分と構造上一体となった部分」の例として配管、配線等が挙げられています。
さらに、標準管理規約(単棟型)では、理事長は、災害等の緊急時には総会または理事会の決議によらずに敷地や共用部分等の必要な保存行為を行える、とされています。 コメントをみると、災害等の緊急時における必要な保存行為としては「共用部分等を維持するための緊急を要する行為」または「共用部分等の損傷・滅失を防止して現状の維持を図るための比較的軽度の行為」が該当するとされています。後者の例として、給水管・排水管の補修、共用部分等の被災箇所の点検、破損箇所の小修繕等が挙げられています。