民法改正後の時効管理(交通事故)
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<ポイント>
◆物損事故の時効については変更なし
◆人身事故については時効の期間が伸長された
◆人身損害に関する保険金請求については時効の期間が伸長されていない

2020年4月1日から改正された民法が施行され(いわゆる債権法改正)、約2年が経過しました。本改正においては不法行為に関する消滅時効も改正の対象となり、経過措置も設けられています。最近、交通事故事案において、消滅時効が問題になり得るケースをいくつか扱って、時効について保険会社の方や弁護士と話をする機会があったのですが、改正後の制度が今一つ浸透していないなと思いました。そこで、本稿では、交通事故を念頭に置きつつ不法行為の時効について解説しようと思います。

交通事故を含む不法行為に基づく損害賠償請求権について、改正前民法は、「損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき」は、時効によって消滅すると定めていました。この「損害及び加害者を知った時」とは、後遺障害のように事故時に損害を把握できない場合や当て逃げや轢き逃げ事案のように加害者を特定できない場合を除けば、事故日になります。

改正民法はこの規定について、「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効について」は、その期間を3年ではなく、5年に改めました。いわゆる人身損害について消滅時効の期間が長くなったわけですが、そのことを踏まえた経過措置として、改正民法施行(2020年4月1日)前に発生した交通事故事案であって、当該施行日時点で消滅時効が完成していない交通事故事案については、消滅時効の期間を3年ではなく5年に伸長することが定められました。以上について、事故の発生日別に時効の期間を簡単に整理すると次のようになります。改正民法の施行日を基準になるわけではないので要注意です。
・2017年3月31日までに発生した交通事故 事故日から3年
・2017年4月1日以降に発生した交通事故  事故日から5年

このような人身損害の時効についてもう1つ注意を要するのが、人身損害を根拠とした保険金請求です。人身損害については、上記で言及した加害者への損害賠償請求だけでなく、自賠責保険や人身傷害保険等の保険金を請求することもできます。しかし、これらの保険金請求権の根拠法令においては、上記の民法改正に伴う改正が行われていません。したがって、改正民法施行後の現在においても、請求の期限は3年のままです。