年末に令和4年度税制改正大綱が閣議決定されました。この後の国会を経て改正が確定することとなりますが、今回はその概要に触れます。
1.個人所得課税
(1)住宅ローン控除制度の見直し
①住宅ローン控除の適用期限を4年延長し、令和7年末までの入居者を対象とするとともに、カーボンニュートラルの実現の観点から、省エネ性能等の高い認定住宅等につき、新築住宅等・既存住宅ともに、借入限度額の上乗せを行う。
②控除率を0.7%とするとともに、所得要件を2,000万円とする。
③新築住宅等について控除期間を13年とするほか、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅について、合計所得金額1,000万円以下の者に限り、40㎡以上の住宅を控除対象とする。
2.資産課税
(1)住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の見直し
格差の固定化防止等の観点を踏まえ、限度額を見直した上で、適用期限を2年延長する。
(2)登録免許税におけるキャッシュレス納付制度の創設
登録免許税をクレジットカード等により納付することを可能とする制度を創設する。
(3)土地に係る固定資産税等の負担調整措置
土地に係る固定資産税等の負担調整措置について、令和4年度に限り、商業地等に係る課税標準額の上昇幅を、評価額の2.5%(現行:5%)とする。
3.法人課税
(1)積極的な賃上げ等を促すための措置
①大企業等
・令和5年度末を期限として、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が3%以上である場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%の税額控除を行うとともに、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が4%以上である場合には、税額控除率に10%を加算し、教育訓練費の対前年度増加割合が20%以上である場合には、税額控除率に5%を加算する措置を講ずる。
・令和5年度末を期限として、法人事業税付加価値割において、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が3%以上である場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額を付加価値額から控除する措置を講ずる。
・一定規模以上の大企業に対しては、給与の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針等を公表していることを要件とする。
②中小企業
雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が1.5%以上である場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%の税額控除を行うとともに、税額控除の上乗せ措置として、雇用者給与等支給額の対前年度増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率に15%を加算し、教育訓練費の対前年度増加割合が10%以上である場合には、税額控除率に10%を加算する措置を講ずる。
(2)オープンイノベーション促進税制の拡充
出資の対象会社に、設立10年以上15年未満の売上高に占める研究開発費の割合が10%以上の赤字会社を追加する等の見直しを行う。
(3)5G導入促進税制の見直し
地方でのネットワーク整備を加速する等の観点から、対象設備の要件や税額控除率等の見直しを行う。
(4)大法人に対する法人事業税所得割の軽減税率の見直し
外形標準課税対象法人(資本金1億円超の法人)の年800万円以下の所得に係る軽減税率を廃止し、標準税率を1.0%とする。
(5)ガス供給業に係る法人事業税の課税方式の見直し
導管部門の法的分離の対象となる法人等が行う事業(導管事業を除く。)については収入割額、付加価値割額及び資本割額の合算額により課することとし、その他の法人が行う事業(導管事業を除く。)については他の一般の事業と同様とする。
4.消費課税
(1)自動車重量税におけるキャッシュレス納付制度の創設
自動車重量税をクレジットカード等により納付することを可能とする制度を創設する。
(2)航空機燃料税の税率の見直し
航空機燃料税の税率の特例措置について、税率を見直した上で、適用期限を1年延長する。
(3)沖縄県産酒類に係る酒税の軽減措置の段階的廃止等
沖縄の復帰に伴う激変緩和措置として設けられた沖縄県産酒類に係る酒税の特例について、復帰50年を迎え、酒類製造業界から提言がなされたことなどを踏まえ、沖縄の酒類製造業の自立的発展に向けた施策の一環として、最長10年をかけて段階的に廃止する。