令和元年会社法改正(第1回)~株主総会資料の電子提供制度~
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<ポイント>
◆電子提供により株主総会参考書類等の書面提供が不要に
◆株主の請求があれば書面交付は必要

会社法は2005年(平成17年)に成立し、2014年(平成26年)に改正されました。平成26年改正の附則において、企業統治に係る制度の在り方について、必要があれば所要の措置を講じることとなっていることもあって、平成29年の法務大臣から法制審議会への諮問以降、改正作業が進められました。その結果、2019年(令和元年)に再度、会社法が改正され、一部を除いた改正条文が2021年(令和3年)3月1日に施行されました。
改正会社法施行後半年以上が経過しましたが、2022年(令和4年)に施行が予定されている株主総会資料の電子提供制度の内容を含めて、改正内容を確認することは意義があるものと考え、今回から令和元年会社法改正の解説を連続して掲載することとしました。なお、紙面の都合上、主要な改正点のみを取り上げることになりますことはご理解ください。

今回は上記の株主総会資料の電子提供制度について解説します。
上場会社の株主総会の招集通知は、一般には(1)日時・場所、会議の目的事項等会社法298条1項の事項(「株主総会決定事項」といわれ、これを記載した通知は「狭義の招集通知」といわれることがあります)と(2)事業報告書及び計算書類(監査報告・会計監査報告を含みます)及び連結計算書類(通常は監査報告・会計監査報告も添付されています)、(3)議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(株主総会参考書類)があり、書面で行われる場合にはこれらが一体として招集通知のタイトルのもとに冊子となっています。また、議決権行使書面は会社に郵送できるように分離されて同封されています。なお、以下は上場会社を念頭に述べます。また、株主提案権(次回参照)は行使されていないものとします。
これらは、書面のみならず電磁的方法により行うことができますが、電磁的方法による場合、改正前には個別に株主の同意を得ることが必要でした。そのため、殆ど利用されていないのが実態でした。ただし、(2)と(3)の一部についてはウェブ開示によるみなし提供が認められており、多くの会社が利用していました。
改正法では定款で電子提供措置をとる旨を定めることにより、(2)と(3)の全部(これらと議決権行使書面を「株主総会参考書類等」といいます)について、株主の個別同意なく電子提供することが可能になりました。その場合、株主総会参考書類等について電子提供をしなければならず、これにより書面の交付は不要となります。
ただし、議決権行使書面を交付するときは、それに記載すべき事項について電子提供措置をとる必要はありません。
上場会社は、政令で定められた時期に定款の定めがあるものとみなされることになっています。
電子提供の方法は会社法施行規則で定められていますが、簡単にいえばインターネット上のサーバーにアップロードして、株主がそれにアクセスする方法です(EDINETを使用することも可能ですが詳細は割愛します)。
株主総会参考書類等に加えて、株主総会決定事項も電子提供する必要があり、そのうち株主総会の日時・場所、目的事項等の一定事項については書面による必要もあります。また、電子提供した上記(1)から(3)の事項(電子提供措置事項といいます)を掲載するウエブサイトのアドレスについても書面による必要があります。
なお、改正法においても個別の株主の同意による電磁的方法によることは可能であり、その場合には上記の株主総会の日時・場所、目的事項等の一定事項についても書面による必要はありません。

一方で、インターネットを利用することが困難な株主のために、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができることとしました。
しかし、議案などを除く一定事項については定款で定めることにより記載を省くことができます。この記載を省くことのできる事項は、ウェブ開示によるみなし提供が認められていた事項とその相当部分が重なっており、ウェブ開示と平仄を合わせたといえるかもしれません(私見)。ただし、連結貸借対照表、連結損益計算書についてはウェブ開示の対象ですが上記の記載の省略はできません。
なお、詳細は割愛しますが、監査役等からの請求により、株主に対して上記の省略に関する通知が必要な場合があります。
上記書面交付請求の日から1年を経過したときは、会社はこの請求をした株主に対して書面の交付を終了する旨を通知し、これに異議がある場合には一ヶ月以上の一定期間内に異議を述べるよう催告することができます。異議が述べられない場合には、この期間が経過した後、書面交付請求は効力を失うことになります。
これは、書面交付請求をした株主が、時間の経過とともに累積しないようにするためということです。

電子提供は、株主総会の3週間前の日又は株主総会の招集通知を発した日のいずれか早い日から株主総会の日後3ヶ月を経過する日まで継続して上記のアップロードをしなければなりません。この期間を「電子提供期間」といいます。
電子提供期間中にサーバーのダウン等のインターネット上の掲載にトラブルがあることが考えられ、株主が電子提供をうけられなくなったり、会社の修正によらずに改変されたりしたような場合(「電子提供期間の中断」といいます)であっても、会社が善意、無重大過失で、中断の期間が電子提供期間の10分の1を超えない場合で、会社が速やかに対処する等の一定の場合には電子提供の効力に影響を及ぼさないこととしました(詳細は割愛します)。
それらに加えて、電子提供期間の中断が株主総会前に起こった場合には、中断の期間が電子提供開始日から株主総会の日までの10分の1を超えないことも必要です。