CGコードの2021年改定について(その2)

<ポイント>
◆取締役のスキル・マトリックスの開示と他社での経営経験者の選任の検討が必要
◆サステナビリティへの対応は収益機会でもあることを認識した取組みの開示を
◆支配株主のいる場合、独立性のある社外取締役を3分の1以上選任する等の対応を

原則4-10の補充原則において、指名・報酬委員会にはジェンダー等の多様性やスキルの観点からの関与、助言も求められており、原則4-11の補充原則においては、各取締役の知識・経験・能力等を一覧したスキル・マトリックス等を開示すべきとされています。また、独立社外取締役には、他社での経営経験(CEO経験者に限るという趣旨ではない)を有する者を含めるべきとされています。
同原則では、取締役会の多様性に関して、ジェンダーと国際性に加えて、職歴と年齢を考慮要素として追加しました。女性取締役の選任の義務付けに関しては、フォローアップ会議で議論はでましたが盛り込まれなかったということです。
ただし、原則2-4の補充原則では、上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等について、多様性確保についての考え方、自主的かつ測定可能な目標を示し、その状況を開示すべきとされています。私見ですが、特に、女性の登用については測定可能な情報を開示しない場合、その理由を説明する必要がありそうです。

「サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組み」については「第2章 株主以外のステークスホルダーとの適切な共同」と「第3章 適切な情報開示と透明性の確保」に記載されています。
原則2-3の補充原則では、サステナビリティを巡る課題への対応は、収益機会にもつながる重要な経営課題であることの認識、積極的・能動的な検討を求めています。
原則3-1の補充原則では、サステナビリティについての取組みを開示すべきとされており、特にプライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行うべきとされています。
開示においては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFDと略されますが、国際金融の監督を行う機関が気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設置しました)と同等の枠組みに基づく質と量が求められています。

その他としてグループガバナンスの在り方が示されています。特に上場子会社における少数株主の保護のためのガバナンス体制の整備の重要性が指摘されています。
基本原則4(これ自体は変更されていません)の考え方において、このようなガバナンスの整備が求められており(上場子会社における少数株主の保護の問題については、拙稿「親子上場に対して新ルール策定の動き」 参照)、原則4-8の補充原則では、支配株主を有する上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を3分の1以上(プライム市場上場会社は過半数)選任するか、独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべきとしています。
また、監査に対する信頼性の確保及び内部統制・リスク管理に関して、原則4-3の補充原則では、取締役会は全社的なリスク体制を適切に構築し、内部監査部門を活用して運用状況を監督すべきとしています。
さらに、原則4-13の補充原則では、内部監査部門が取締役会及び監査役会に対しても適切に直接報告を行う仕組みを構築する等すべきとされています。内部監査部門はCEO等のみの指揮命令下となっていることが多く、経営陣幹部による不正事案等が発生した際に独立した機能が十分に発揮されていない可能性があるためです。

以上のとおり2回にわたって改訂CGコードの解説をしましたが、これら以外にもプライム市場上場会社には英語での開示・提供を行うべき等の改訂がされています。