独禁法令和元年改正の施行で除斥期間の延長等に注意

<ポイント>
◆排除措置命令、課徴金納付命令の除斥期間が7年に延長
◆課徴金の算定期間も調査開始日から最長10年に遡れる
◆本年12月25日に違反行為終了後5年を経過している場合には従前と同じ

令和元年(2019年)6月19日に成立した改正独占禁止法が、令和2年(2020年)12月25日に施行されます。ただし、一部の改正規定についてはすでに施行済みです(たとえば、検査妨害罪の法人等に対する罰金の上限額の引上げは令和元年7月26日)。
今回の改正は、いわゆるエンフォースメントすなわち違反行為に対する措置や手続きを対象としており、調査協力減算制度(課徴金減免制度に付加して、事業者の協力に応じて課徴金を減額する制度で、事業者の協力が事件の真相解明に資する程度に応じた減算率が適用される)の導入、課徴金の算定方法の見直しなどの改正がされました。
その中で、排除措置命令の除斥期間及び課徴金の算定の対象期間(実行期間)の延長がされたので本稿ではそれを取り上げます。

公正取引委員会は、違反行為を行っている事業者等に対して、違反行為の差止めを含む、違反行為を排除するために必要な措置を排除措置命令書により命令します。
また、過去には違反行為をしたが、現在はしていない場合でも、特に必要があると認めるときは、違反行為が既になくなっている旨の周知徹底その他の違法行為が排除されたことを確保するために必要な措置を同様に命ずることができます。
しかし、違反行為の終了から5年を経過していた場合には、違反行為は認定できても排除措置命令をすることはできませんでした。この5年間の期間を除斥期間といいます。
今回の改正では、この除斥期間が7年に延長されました。そのため、たとえばカルテルの場合、カルテル合意を破棄した後であっても7年間は、カルテル排除を確保する排除措置命令がされる場合があります。

独禁法違反行為のうち不当な取引制限のうち価格カルテルなどの場合、公正取引委員会は違反事業者に対して課徴金の納付命令をします。課徴金納付命令の除斥期間も排除措置命令と同じく5年から7年に延長されました。
課徴金の額は、事業者が違反行為の実行として事業活動を行った日(始期)から、その事業活動がなくなる日(終期)までの期間(実行期間)における違反行為の対象商品等の売上額に一定率を乗じた額です。
ただし、実行期間が3年を超えるときは、終期からさかのぼって3年間に限定されていました。
今回の改正では、算定期間について、その始期を調査開始日から最長10年遡れることになりました。

これらの改正は上記のとおり令和2年(2020年)12月25日に施行されます。
ただし、改正独禁法には経過措置が定められていて、上記施行日において違反行為終了時から5年経過している場合には、改正された除斥期間を7年とする規定は適用されず、公正取引委員会は排除措置命令、課徴金納付命令をすることはできません。
上記施行日において違反行為を終了していても、終了時から5年経過していない場合には除斥期間を7年間とする規定が適用されて、違反行為終了時から7年間は排除措置命令がされる場合があります。その場合でも、課徴金の計算方法については改正前の方法、すなわち終期からさかのぼって3年間に限定されます。