2020年11月01日

前回1月にエッセイを担当したとき、昔見たテレビのことを書いていました。
そこで「志村けんは今でも活躍していてすごい。」と書きました。
まさか、その後、新型コロナウィルスの感染が拡大して、親戚のおじさんみたいな、あの志村けん(敬意をこめて呼び捨てにしますが)が亡くなってしまうなんて。本当に何が起こるか分かりません。

あの自粛期間中は、さすがに不安な毎日が続きましたが、それもだいぶん前のことのように思えます。今現在は、第2波が終わりきらずに、微増傾向にあるのが心配です。とはいえ、経済も回さないといけないので、皆マスクをしている以外、見た目の日常は大分戻ってきました。私も仕事があって、忙しくさせていただいているのは本当にありがたいことです。

前にも書きましたが、私は十年ほど前から、困ったときは、禅の本を読んで、心を落ち着かせようとします。
難しい話を抜きにすると、禅は、ありのまま、ありのまま、明日のことは分からない、過去を振り返っても変えられない、自分が変えられないものは変えられないとあきらめる(断念するのではなく、悟るに近いかな?)、ただひたすら今を生きましょう、ということと理解しています。
新型コロナウィルスなんて、本当に微細なもので、それが体内に侵入してくることをゼロにすることはできない。でも、(これこそ今年の1月に誰も口にしていなかった)「3密」を避ければ、かなりの程度、そのリスクを減らせる。だから、3密を避けて、今、目の前にある仕事を一生懸命やろう、それで疲れたら、家に帰って、また明日頑張ろうか。ひたすら、その繰り返しです。コロナ退散と願うだけでは、何も変わらないし、余計に不安になるだけです。

よくテレビで「今できること!」と盛んに言っていて、人を勇気づけるのはいいことなのですが、これまた、なんか張り切り過ぎて、なんか違うなと思ってしまいます。何でも楽しんですることは悪くないですけれども。

NHKのドキュメント番組で、東京の「日大豊山(ぶざん)高校」の3年生の水泳部員の様子を映しているのをみました。
同校はインターハイの常連で、何度も優勝している強豪校。ところが、今年、インターハイが開催されないことが決定し、3年生のある部員は、モチベーションを全く失い、自室に引きこもってしまいました。指導者の大人たちは何とか部員たちのために大会を開いてあげようと、全国の有力校に声をかけて、数校で独自大会を企画しました。ところがそのうち東京の感染者が増え始め、結局、その独自大会は、都内の2校で開催されることとなったのです。
やる気を失っていた部員は、その想いをぶちまけながら、周りの部員の励ましで、徐々に立ち直り、次第に練習に取り組むようになりました。そして、独自大会では、自己ベストを更新することが出来ました。
その部員が、泳ぎ終わって最後に言った一言が、本当に心に残っています。
「インターハイに代わる大会なんてないけど、この独自大会に代わるものもなかった。」
この多感な高校生が何気なく言った一言、すごく自然で、素直で、素晴らしく、これこそ、今を生きるだなあ、としみじみ感じいりました。
無理やりではなく、今を生きる。コロナであっても、コロナでなくても、今に感謝しつつ、一歩一歩歩んでいきたいと思います。