パワーハラスメント対策が義務化されました
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◆2020年6月1日から施行
◆事業主のパワハラ防止措置義務が明文化
◆企業にはより一層の取り組みが求められる

2020年6月1日から、労働施策総合推進法改正法(以下、「法」と言います。)が施行され、パワーハラスメント対策が事業主の義務とされました。

第1に、職場におけるパワーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。
適切な措置を講じていない場合には労働局長名での助言、指導、勧告の対象となり、勧告に従わなかった場合は企業名の公表もありうる、と定められています。なお、中小企業については、2022年3月31日までは努力義務にとどめられています。
第2に、パワーハラスメントの相談等を理由とする不利益取り扱いが明文で禁止されました。
第3に、パワーハラスメントの問題に関する努力義務が設定されました。

職場におけるパワーハラスメントとは、法により、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによって、労働者の就業環境が害されること、と定義されています。
なお、職場とは広く業務を遂行する場所のことを言います。
これまでは、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントについては、法律により定義され、事業主には防止措置が義務付けられていましたが、パワーハラスメントについては定義も事業主に対する義務付けもなされていませんでした。
今回、働き方改革の一環として、法によるパワハラの定義が置かれ、事業主の義務が定められました。

第1の雇用管理上の措置の具体的内容の例としては、事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発、就業規則等の文書に厳正に対処する方針を規定して労働者に周知・啓発すること、苦情などに対する相談体制の整備、被害を受けた労働者へのケアや再発防止などがあげられます。

第2の不利益取り扱いの禁止は、パワハラを使用者に相談したこと、事業主による相談への対応(社内調査等)に協力した際に事実を述べたことを理由として、事業主が労働者に対し解雇その他の不利益な取り扱いを行うことが、法により明文で禁止されたことをいいます。
もちろん、このような定めがなくともこのような不利益取り扱いは許されませんが、明文化することにより、労働者が安心して相談や協力ができることを期待したものです。

第3の努力義務については、法により、国、事業主、経営者や役員、労働者について、努力義務としてではありますが、パワハラへの取り組みや理解が求められています。
この点については、違反に対して法的な責任が直接問われるものではありませんが、それぞれの立場でパワハラ問題について理解しこの問題に取り組むことによって、パワハラをなくすことを期待しているものです。

また、今般の改正により、パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、紛争の当事者は、労働局長に対し、援助を求めることができるようになりました。

パワーハラスメントは職場のコンプライアンスにおける重大問題でありながら、これまで法的な規制がなく、一般的な不法行為等の条項によって法的な権利を実現するほかありませんでした。
今回の法制化によって、企業のより一層積極的な取り組みが期待されます。