<ポイント>
◆労基法上、休業手当は60%以上
◆不可抗力による場合は支払い義務なし
◆民法では100%が原則。ただし60%以上であれば別段の定めは可能
現在(2020年4月)、新型コロナウイルスの蔓延により、企業も雇用調整等を検討せざるを得ない状況になっています。
これらについては、厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」というHPに詳しい内容が書いてありますが、基本的な考え方についてもう少し詳しい解説があった方がよいように思いました。
そこで、今回は、コロナにより労働者を休ませる場合について労基法の基本的な考え方と民法との関係について解説したいと思います。
労基法上の考え方
まず、考え方として、労働基準法第26条で、使用者の責に帰すべき休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
これは違反すれば罰則が課せられる規定ですので注意が必要です。
ただ、厚生労働省は、できればそれを超えた休業手当の支払いを推奨しており、雇用調整助成金の支給対象になり得る、としています。(雇用調整助成金については、支給要件が緩和され支給額も増える見込みですので厚生労働省のHP等をご確認ください。)
では、今回のコロナにより減収となったり事業を休止しなくてはならなくなったりした場合、「使用者の責に帰すべき」場合となるのでしょうか。
この点、不可抗力による休業の場合は、「使用者の責に帰すべき事情」には当たらないとされています。
ここでいう不可抗力とは、1その原因が事業の外部より発生した事故であること、2事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること、の2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能なときに、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するとされて、休業手当の支払いが必要となることがあります。
すなわち、コロナで業績が悪い、というだけでは、必ずしも使用者の責めに帰すべき事情でないとはいえず、具体的な事情に応じてかつ雇用主が最善の努力を尽くしてもなお休業の必要がある場合にのみ、休業手当の支払い義務がなくなる、ということになります。
民法の定めとの関係
なお、これらは労基法上の話であり、民法第536条2項では、「債権者(本件では会社)の責めに帰すべき事由によって債務(本件では労務)を履行することができなくなったときは、債権者(本件では会社)は反対給付(本件では賃金)の履行を拒むことができない。」との規定があります。
したがって、使用者の責に帰すべき休業の場合、労基法上は賃金の60%は必ず支払わなければならず、民法上は原則として100%の支払義務があることになります。
なお、民法の規定は合意によって異なる定めをすることが可能ですので、就業規則や、労使協定等によって「休業手当は平均賃金の60%とする」等の異なる定めをすればそれに従うことになります。