2008年03月01日

弁護士になって12年、入所当時から、数々の離婚の案件を取り扱ってきました。
うまくいっていないから離婚の問題が発生するわけで、様々な事案に触れていると、結婚している身としては、つい我が身に引き寄せて、夫婦はどうやればうまく行くのだろう、と考えてしまいます。
もちろん、夫がやさしくて真面目でこちらの欠点には目をつぶってくれ、相手の家族もやさしくて、しかも、マザコンではなく、など、すばらしい相手であれば、おそらくほとんど何の問題もないのでしょうが、相手にばかり求めていてもなかなか難しい部分もあるので、今回は、私が考えた女性から見た夫婦円満のコツについて書きたいと思います。

まずは、一時の感情で配偶者を罵らない。
当たり前のことですが、やはり人間どうし、カッとしてしまうことはあります。
特に女性は、家事の負担が多くなりがちで、疲れがち。しかも家事は延々終わりがない。疲れるとつい怒りっぽくなってしまいます。
女性の場合は、男性よりも言葉に出すことで発散しやすいという側面もあるように思います。
しかし、だからといって、いかにうまく相手をやりこめてみても事態は良くならないのです。
むしろ相手の愛情が冷めてしまう場合のほうが多いのです。
一生懸命がんばって相手を罵ってしまうくらいなら、思い切って手を抜く、とりあえずいやなことからは逃げるなどの方法をとるほうがいいのではないでしょうか?
そして元気が出て気持ちに余裕ができた段階で、相手にお願いすることはお願いする、という方法のほうがよい結果を生むような気がします。

次に、配偶者の親や親族を悪く言わない。
これは当事務所の片井弁護士から私の結婚式で言われたことです。
自分の親族について、この人はこういうところはいやだなあ、と自分で思っていても、配偶者から言われたらむっと来るもの。
思うところがあっても、不用意に口に出さないほうがよい、と言われました。
確かに、夫婦だと、人のことについてあれこれ話すことがありますが、配偶者の親族のこともついうっかり他の第三者と同じように言ってしまいがちです。
でも、配偶者にとっては、紛れもない身内。
このことをついうっかり忘れないように。配偶者が身内のことを愚痴ったときも安易に同調しないことが大切だと思います。

2番目のコツの延長で、夫婦の関係について、自分の身内に口を出させない、というのもあります。
特に自分の実家から金銭の援助があった場合は気を付けたいものです。
実家としては、娘かわいさ、娘夫婦ゆえの遠慮のなさで、などいろいろな理由で、つい口を出してしまいがちですが、援助を受けている男性の側からすれば、非常にプライドを傷つけられるようです。
実家側からすれば娘の配偶者は自分の息子と考え、人生の先輩としてもいろいろ意見を言いたいこともあったりするでしょうが、配偶者のほうでは、若ければ若いほど、未熟であれば未熟であるほど、自分は一人前と思っていることが多く、妻の実家の遠慮のない意見というのはあまりよい結果を生まないと思います。
どうしても口を出さざるをえない場合もあるでしょうが、これが引き金になって修復不可能になる場合も多い、ということは事実ですので、実家の口出しは慎重のうえにも慎重にするほうがよいと思います。

あとは緊張感と感謝の心を忘れないこと、というのがあると思います。
この点は、自分でもできていないなあ、と思うので、私自身書いていて非常に心苦しいのですが、この点が一番重要かも知れません。
公共団体の相談などで数々の相談を受けていると、相手には要求するけれど、自分自身のことは全く振り返らない人に会うことがあります。
特に男性側の浮気は、それ自体、よくないことであるのは当然ですが、鬼の首をとったかのように、相手にも女性にも社会的な制裁を課してやりたい、などと息巻いている人には、疑問を感じることもあります。
籍が入ったからと言って一生無条件で愛される保証を受けたわけでも、一生無条件で養ってもらえるという契約をしたのではないのです。
結婚した女性は、法律や判例によってある程度守られていますが、本当に「ある程度」です。
相手の心が離れて夫婦の関係が破綻すれば、相手も不利益を受けますが、自分も非常に不利益を受けます。
私としても、結婚した男性側の様々な責任を軽く考えているわけではなく、もっと責任感をもってもらいたいと思う場合が多いです。でも、どちらが悪いということは関係なく、結果として、夫婦お互いの気持ちがなくなってしまえば、最終的には家族は崩壊してしまいます。
そのことを考えると、いかに家族であり、慣れ親しんだ夫であっても、気持ちがいったん離れたらおしまいの関係なのだという緊張感を忘れないほうがいいように思います。
感謝の心については、いわずもがな、ですが、私自身ついつい忘れがちなことです。
日々の家庭運営は、些末な雑事の集積であり、これらの処理を滞りなく行おうと思えば思うほど、その手間を増やす、あるいは協力してくれない配偶者に対する細かな不満がつもりがちになってしまいます。
しかし、一歩距離をおいて目線を変え、相手が存在してくれていること、家族のためにしてくれること、そのためにがまんしてくれていること、などを考えれば、感謝の心はおのずと湧いてくるのではないでしょうか?
感謝の気持ちを持った時には、できるだけこまめに言葉に出すというのも大切なように思います。

なお、この原稿を夫に見せたところ、実際にはあまりできていないのでは、という趣旨のことを遠慮がちに指摘されました。
今後は精進したいと思います。