<ポイント>
◆通報者保護を厚くするため公益通報者保護法の改正が検討されている
◆内部通報制度導入を企業に義務づけることも検討されている
公益通報者保護法の改正に向けた「公益通報者保護専門調査会報告書」が昨年12月に公表されています。
公益通報者保護法については、適用要件が厳しすぎるため通報者保護として充分機能していないなどの指摘があります。こうした指摘をふまえ報告書は、保護される通報者の範囲、外部通報の保護要件、対象法令の見直しなどの改正項目を提案しています。
これらの論点については、企業にとって留意は必要であるものの、実務的な対応に苦慮するといった影響までは見込まれません。
その一方で報告書は、常時雇用する労働者数が300人超の事業者に内部通報体制の整備を法的に義務づけるべきだという提言もしており、実際にこのとおりに法改正されるならば企業への影響は大きいと考えられます。
内部通報制度は、内部統制体制の一環、あるいはコーポレートガバナンス・コード上の要求事項の一つとして上場企業の大多数で導入されていますが、現在は制度導入を企業に義務づける法令はありません。こうしたこともあり、非上場の企業、特に小規模な企業ではまださほど普及していないのが現状です。
報告書の提言は、上場、非上場を問わず従業員数が300人超の企業に内部通報体制の整備を法的に義務付け、体制整備が充分でない企業に対しては勧告や公表などの行政措置まで行うというかなり踏み込んだ内容になっています。
他の法令におけるのと同様の解釈であれば、常時雇用する労働者にはアルバイトやパートタイム従業員も一定の場合には含まれることになります。たとえば、多数の店舗、営業所をパート、アルバイトで運営しているような会社は他人事では済みません。
報告書どおりであれば相応のインパクトがある法改正になりそうです。
私自身は、本当にそうした改正まで行うべきなのか?、消費者庁管轄の公益通報者保護法で扱うようなテーマなのか?という疑問も感じていますが、今後の法改正の動向を引きつづき注視し、依頼者へタイムリーな情報提供を行うようにしたいと考えています。気になることがありましたらお問い合わせください。