<ポイント>
◆特許を受ける権利を会社に原始帰属させることも社内規程などにより可能
◆共同開発など、他社と知財を共有するケースで利点になる
平成27年特許法改正により、取締役や従業員による職務発明について「特許を受ける権利」を当初から会社に帰属させることも可能になりました。いわゆる原始帰属です。
こうした原始帰属を導入するのであれば、職務発明規程などでその旨を定めておくことが必要です。
ただし、こうした原始帰属を定めた場合であっても、会社から発明者(従業者個人)に対して「相当の利益」を付与する必要があります。「相当の利益」は経済的な価値があるならば金銭には限られません。例えば、ストックオプションを割り当てる、有給休暇を与える、人事考課において一定のプラス査定をするといった方策も考えられます。
原始帰属(当初から会社の権利)であっても、承継取得(従業者個人から権利を譲り受ける)であっても、会社側は発明者たる従業者たる個人に対して「相当の利益」を付与する必要があることには同じです。
では、特許を受ける権利を会社に原始帰属させる利点がどこにあるかというと、次の二点です。
①従業者個人が第三者に権利を譲渡してしまう心配がなくなる(二重譲渡が生じない)
②他の共有者の同意を得ずに会社が権利を取得できる
①が問題になるケースはかなり限定的ですが、②はより現実的な事柄です。
例えば、他社と共同開発を行い、双方担当者による共同発明が生じているとします。特許を受ける権利は共有状態となり、共有持分の譲渡については他の共有者の同意が必要です。
職務発明に関する特許を受ける権利の取扱いを承継取得としている場合、それも一種の譲渡にあたります。このため、他の共有者(つまり共同開発の相手先企業またはその担当者)の同意を得ないと、自社に権利を帰属させることができません。
これに対して特許を受ける権利を会社に原始帰属させるのであれば、それは譲渡ではないため、他の共有者の同意を得る必要はありません。
共同研究、共同開発などにより共同発明が想定される企業においては意識しておくべき点です。