マンションの一部が滅失したら

<ポイント>
◆復旧手続は滅失部分の範囲によって異なる
◆小規模滅失なら単独復旧が可能

地震・火災などの自然災害や車の飛込みなどの事故によりマンションの一部が滅失した場合、復旧するには費用がかかります。この復旧費用は誰が最終的に負担しなくてはならないのか、復旧するためにはどのような手続を経なければならないのかについて、ご説明します。
なお、「滅失」とは、物理的に消滅したか否かにかかわらず、その部分を元に戻すのに新たに作り直す必要がある場合をいいます。
専有部分だけが滅失したのなら、その専有部分の所有者(区分所有者)が自らの費用で復旧するということで特に問題はありません。専有部分と共用部分の両方が滅失した場合、または、共用部分だけが滅失した場合に問題となります。

最初のポイントは、「建物価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した場合」か「建物価格の2分の1を超える部分が滅失した場合」かです。区分所有法では、前者と後者とで、復旧に向けた手続を分けて規定しています。前者を「小規模滅失」、後者を「大規模滅失」といいます。
そして小規模滅失か大規模滅失かを判断するにあたり、以下の留意点があります。
まず、専有部分と共用部分の両方が滅失した場合、「滅失した専有部分の価格」と「滅失した共用部分の価格」の比率は問題になりません。
あくまでも「滅失した専有部分の価格」と「滅失した供用部分の価格」の合計が建物価格の2分の1以下であれば小規模滅失であり、建物価格の2分の1を超えれば大規模滅失です。
次に、滅失部分が建物価格の2分の1以下か2分の1を超えるのかを判断する基準ですが、明確なものはありません。費用や時間との兼ね合いから、以下の簡易な方法がとられることが多いです。
建物の再調達価格(同等の建物を新しく建てるのに必要な価格)から減価償却分を差し引いて一部滅失前の建物価格を求めます。そして、この価格と、滅失した専有部分・共用部分の復旧費用の見積額合計とを比較して、2分の1以下(小規模滅失)か2分の1超(大規模滅失)かを判断するという方法です。

小規模滅失の場合、区分所有者が単独で共用部分を復旧することができ、その復旧費用は、他の区分所有者に対して、共用部分の持分に応じた請求をすることができます。
ただし、復旧の工事に着手する前に、集会で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議がなされると、もはや単独で復旧させることができなくなります。決議がなされた以上、区分所有者はそこで決められた費用・復旧方法に従うべきだからです。この決議は、区分所有者の頭数と議決権それぞれの過半数の賛成で成立する普通決議です。

大規模滅失の場合、区分所有者は、滅失した共用部分を単独で復旧することはできません。復旧するには、区分所有者の頭数と議決権の4分の3以上の賛成で成立する特別決議が必要です。
そして復旧決議がなされると、復旧費用は、決議に賛成しなかった者も含めた区分所有者全員で負担することになります。
それゆえ、決議に賛成しなかった区分所有者が、復旧費用の支払いを回避したいのであれば、建物及び敷地に関する権利の買取りを決議賛成者等に請求し、区分所有者でなくなる必要があります。
以上、マンションの一部が滅失した場合の復旧費用について述べましたが、マンション全部が滅失した場合は、法律上、敷地の共有者全員の合意を得て、または、全部滅失の原因が政令指定災害のときは敷地共有者の議決権の5分の4以上の賛成を得て、マンションの再建を行うことになります。