今回は、前回片井弁護士が紹介した「動産譲渡担保に登記制度ができました」の続編として、債権譲渡登記制度について法改正がされた点を解説します。
本年10月3日より新しい動産債権譲渡特例法が施行されました。
この改正により、もともとあった債権譲渡登記制度にいくつか変化がありました。
債権譲渡登記制度は、平成10年10月1日より施行された「債権譲渡特例法」により定められました。
それまでは個々の債務者ごとに、内容証明郵便などの確定日付ある証書によって、対抗要件を具備しなければなりませんでした。
これを簡素化するために定められた債権譲渡登記制度は、法人が行う債権譲渡については登記によって一括して対抗要件を具備することができるようになり、一定の成果を上げてきました。
今回の改正は、まず第1に、以前はできなかった「債務者が特定していない将来債権の譲渡の登記」を可能にしました。これにより、債務者が特定していない将来債権の譲渡も登記でき、例えば、不動産賃貸事業を営む会社が所有不動産の賃貸にかかる将来の賃料債権を担保化することが可能となったり、クレジット業者が将来のクレジット債権を担保化しようとすることが可能になりました。
このような債権譲渡の登記事項のイメージとしては、例えば賃料債権については、「債権の種別・不動産賃料債権 債権発生原因・○○所在の○○マンションの各部屋の賃貸借契約に基づく賃料債権 債権発生年月日 平成18年1月1日から平成27年12月1日」のようになります。
第2に、現行の債権譲渡登録制度は、将来債権も含めて譲渡にかかる債権の総額を必須の登記事項としていますが、将来債権についての見積額を記載することは、却って混乱を招く場合もあるため、将来債権の譲渡(既に発生している債権と併せて譲渡する場合も含む)については債権の総額は登記事項とはしないこととしています。
第3に、現行の登記存続期間が原則として50年以内だったのが、債務者が特定していない将来債権の譲渡については、システムへの過大な負担を避けるためと現実的に想定される取引が10年以内のものであることが通常であることなどから、原則として10年以内とされました。
但し、10年を超える存続期間を定める必要がある場合もありうることから、特別の事由がある場合には10年を超えて存続期間を設定または延長することができるとされています。例えば、債務者不特定の将来債権を流動化・証券化する際に、発行される証券について10年を超える償還期間を設定した場合などが特別事由がある場合にあたります。