【民法改正について】
平成16年12月1日に「民法一部を改正する法律案」が公布され、平成17年4月1日施行されます。
この改正は、民法の表記を平仮名・口語体に改めるという民法の現代語化を行うという表現に関する改正と、保証制度の見直しに関する内容に関する2つの改正点があります。
今回は、保証制度の改正について解説したいと思います。
【改正の理由】
中小企業が融資を受ける際には、経営者やその親族等による根保証が必要なことがほとんどです。
法律上、根保証について保証の限度額や保証期間について法的規制がなかったため、主債務者の債権者に対する全ての債務について保証するいわゆる包括根保証が多用されてきました。
その結果、中小企業の倒産に伴い、親族等の懇請にまけて印鑑を押してしまった個人が、全ての財産を失うばかりか破産状態に追い込まれる事案が頻発し、社会問題化しました。
包括根保証に対する法的規制を行う必要があるとの社会的な批判が高まり、今回の改正が行われたのです。
【改正の内容】
改正法の概略を説明すると、融資に関する根保証契約であって保証人が個人であるもの(貸金等根保証契約)を対象として、極度額の定めのない根保証契約を無効とするとともに、その保証期間を制限する等の措置を講ずることが主な内容です。
また、これと併せて保証契約全てについて、書面によらない保証契約を無効とし、保証契約については、一定の形式(この場合は契約書の作成)が必要な行為(要式行為)としました。
少し詳しく説明すると、根保証契約のうち、主たる債務が売買取引に関するものや賃借人の債務であり貸金債務を含まないものについては、今回の規制の対象外です。
保証人が法人の場合も対象外です。
極度額(保証責任が発生する限度額)は、元本だけでなく、その利息、損害金等も含めた額です。これは、保証人の予測可能性を確保するためです。
これに違反する約束をした根保証契約は無効です。
また、改正法は、元本確定日は、特に定めがない場合には、契約締結の日から3年後とし、定めのある場合でも5年後を限度とし、5年後以降を元本確定日とする契約については、3年後に確定することとしました。
元本確定日を事後的に変更する場合には、原則として変更日から5年以内の日を元本確定日とすることとしました。自動更新条項は無効です。
これらの改正は、保証人の責任の範囲を時間の経過によって確定することで、保証人の予測可能性を高めたものです。
さらに、改正法は、元本確定事由として、強制執行等の申立・破産手続開始の決定・死亡(いずれも主たる債務者または保証人について)を定めています。
【経過措置】
今般の改正のほとんどは既に成立している契約には影響を与えません。
これに対し、元本確定期日については、改正から3年を経過しても元本が確定しない既存契約は、原則として施行日から3年後の日(平成20年4月1日)が確定日となります。
ただし、既存契約のうち極度額及び元本確定日の定めがあるものについては、例外的に、施行日から5年を経過しても元本が確定しない契約は、施行日から5年後(平成22年4月1日)が元本確定日となります。
また、既存の契約について元本確定日をさらに変更することは認められていません。
また、元本確定事由については、既存契約についても適用されます。