【停止条件付債権譲渡と否認権】
担保のために停止条件付債権譲渡を行った債務者が、破産した場合、破産後、それがどのように扱われるのかについて、平成16年7月16日の最高裁判所判例が出ました。
これまでこの点については、様々な下級審判決が出ており、最高裁の判断が待たれていました。
やや、専門的な題材ではありますが、企業法務においては、非常にポピュラーな担保取得方法であることから、今回法律トピックスの題材とさせていただきます。
【停止条件付債権譲渡とは】
債権の担保の1種として、いわゆる集合債権譲渡担保があります。
集合債権譲渡担保とは、債務者が債権を担保するため現在及び将来の債権を包括的に譲渡するものです。
この有効性や対抗要件の具備の方法については、従来争いがありましたが、現在、争いはなく、包括的な通知・承諾により、対抗要件を備えることができます。
しかし、実際には、債権譲渡を受けた時に対抗要件を具備するのは、難しいと言われています。
というのは、債権を担保にするということは、債務者には他に十分な資産がないということを伺わせるものであり、債務者の信用不安の引き金となるおそれがあるからです。
そこで、実務的には、担保設定時には通知や承諾を行わずに対抗要件の具備を留保し、債務者の不払いや破産申立が発生するなど、担保実行の必要が生じた段階で初めて通知等を行う方法が多く取られていました。
しかし、このような方法では、債務者が破産した場合、破産法により、対抗要件を備えることができるのに放置し破産の直前に対抗要件を備えたとして、対抗要件が否認(効力を認められないこと)されることがあります。
そこで、実務的には、それを避けるため、担保権設定時には、債権譲渡の効力を発生させず、債務者の不払いや破産申立等が生じた時点で、それを停止条件として債権譲渡の効力が発生したものとする方式がとられていました。
これが停止条件付債権譲渡です。
【平成16年7月16日判例の内容】
今回、最高裁は、停止条件付債権譲渡契約につき、その契約の内容、目的等にかんがみると、破産者が支払停止又は破産の申立があった後にした担保の供与、債務消滅に関する行為その他破産債権者を害する行為を否認の対象としている破産法72条2号の趣旨に反し、その実効性を失わせるものであって、その契約内容を実質的にみれば、債務者に停止等の危機時期が到来した後に行われた債権譲渡と同視すべきものであり、否認権行使の対象となる、と判断しました。
つまり、停止条件付債権譲渡契約は、全体として否認される、との判断です。
【まとめ】
これにより、集合債権譲渡については、譲渡契約時に債権譲渡特例法による方式を含む何らかの形で対抗要件を具備する必要があることが明確になりました。
今後の実務に大きな影響を与えると思われます。