日栄・商工ファンド等の商工ローン業者による被害が社会問題としてクローズアップされました。
バブル経済崩壊後、銀行がいわゆる「貸し渋り」対策をとったため、中小・零細企業の中には、銀行から借り入れることができなくなったものが出てきました。
この機会に貸付額を増やしていったのが、商工ローンです。
商工ローンは、中小企業に対し、不動産・商品・手形などを担保として融資する貸金業者です。
【日栄の貸付のしくみ】
例えば、日栄は手形貸付の方法をとっています。つまり、日栄が債務者に対して融資をするとき、担保として、債務者から、融資額を額面として、返済日を満期日とする手形を振り出させます。また、利息額と同額の手形を振り出します。以前は利息を天引きしていました。そうすると、債務者が返済日に返済ができなければ、手形が不渡となるので、債務者は是が非でも返済をしなければなりません。
ところが、商工ローンの特色の一つとして、30%を超える利息を取っていましたので、返済日になっても、全額に利息を加えて返せないのが通常です。しかも、商工ローンから借入をしているのは、前述したように銀行からの借入ができなくなった中小・零細企業です。一括で返せることはほとんどないといってよいでしょう。
そこで、日栄の従業員は、手形の満期日直前になると、追加的な貸付をすすめてきます。債務者としては、担保として振り出した手形が落とせないため、この勧誘に乗らない訳にはいきません。
日栄は、前回貸し付けた元本額を貸付ます。債務者は、この貸付額をそのまま元本の返済に充て、利息分だけは、かき集めて、なんとか不渡を逃れるのです。ただし、この際にも、日栄は前回振出した手形と同額の手形と利息額と同額の手形を複数振り出します。
あとは、この繰り返しで、高額な利息が半ば自動的に支払われることになります。
追加的融資を受けると言っても、新たな貸し付けとして当座預金に振り込まれた金額は、そっくりそのまま返済に充てざるをえませんので、このような貸付方法は、実質的に見れば、一連の一体としての貸付であり、債務者は、高額な利息を支払い続け、早晩破綻する場合が多いのです。
また、日栄の場合は、日本信用保証という子会社が債務者を保証するという形式を取り、債務者から「保証料」名目で利息を取るのですが、これは利息と見なされるべきものです。
【最近の裁判】
近時、債務者から日栄に対して債務が存在しないことの確認を求める訴えが、各地で起こされています。場合によっては、払いすぎたお金を返せという訴えの場合もあります。
日栄は、利息制限法が定める利息を超える利息を取っているからです。利息制限法を超える利息を取っていても、それだけでは業者は罰せられません。刑罰を科されるのは、29.2%を超える利息を取っている場合です。出資法という別の法律で定められています。なお、平成12年6月1日出資法改正前は、40.004%でした。
金融業者が一定の書面を債務者に交付していれば、利息制限法を超える利息をとることも適法なのですが、日栄の場合、この条件を満たしていません。
そのため、利息制限法を超える利息を元本の支払いに充てると、債務がなくなってしまったり、場合によっては、払いすぎていたりすることが往々にしてあるのです。
近時の判例で問題になっているのは、日栄からの追加の貸付をそれぞれ別個の貸付と見るか、一連の取引を一個の貸付と見るか、という点です。後者の方が、元本返済に充てられる利息が多くなる計算になるので、債務者にとっては有利になります。この点について、高等裁判所では判断が分かれているところ、現在最高裁に上告の手続が取られています。いずれ統一的な判断がされるでしょう。
【根保証】
もう一つの問題は、根保証の問題です。日栄が貸し付ける債務者は、他の金融機関から貸付を受けられない企業ですから、日栄としても、むしろ保証人の支払いを期待しているとも言えます。
その契約の仕方が、例えば1000万円の限度で保証するなどの契約になっています。最初の契約時点では、例えば300万円しか貸していなくても、日栄はその後、限度額いっぱいまで追加貸付をし、債務者が破綻したら、1000万円の保証義務を果たせと迫るのです。
しかし、日栄の従業員が、債務者や保証人に対して、債務が1000万円に膨れ上がることについて、十分説明していなかったり、場合によっては、貸付の金額は最初の貸付金額だけであるかのようなごまかしの説明をしていた場合もあります。後者の場合について、保証人の責任を否定した裁判例もあります。