<ポイント>
◆日雇い派遣の原則禁止(業種、対象者で例外あり)
◆グループ内派遣に制限
◆労働契約申し込みみなし制度導入
労働者派遣法の改正法が、2012年3月に成立し、10月1日より施行されています。
この法律は2度の廃案を経て、ようやく成立したもので、当初予定されていた登録型派遣及び製造業務派遣の原則的禁止規定が削除され、かつ、日雇い派遣の対象となる派遣の範囲を当初案の2か月以内の派遣から30日以内の派遣に変更されるなど、改正の内容は当初の案より緩やかなものとなっています。
ただ、当然のことながら人事担当者としては当然抑えておくべき改正内容を含んでいますので、紹介させていただきます。
ただし、後述する、いわゆる「労働契約申し込みみなし制度」の施行日は、法の施行から3年経過後ということになっています。
改正の内容は大きく分けて3つです。
1 事業規制の強化
(1)日雇い派遣の原則禁止
日雇い派遣とは、日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣のことです。
これまでこの形態の派遣では、派遣元・派遣先双方で必要な雇用管理が果たされない場合が多く、法令違反が相次いでいるという批判を受け、労働者保護の観点から原則として日雇い派遣は禁止されることになりました。
ただし、業務の種類について、適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務の場合や、雇用される人について、雇用機会の確保が特に困難な場合などは例外として認められます。
例外となる「業務」の内容は、ソフトウエア開発、機械設計、事務用機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財務処理、取引文書作成、デモンストレーション、添乗、受付・案内、研究開発、事業の実施体制の企画・立案、書籍等の制作・編集、広告デザイン、OAインストラクション、セールスエンジニア・金融商品の営業です。
また、同じく例外となる人は、60歳以上の高齢者、昼間学生、年間の生業収入が500万円以上ある者(副業として派遣をする者)、配偶者等の収入により生計を維持する者で、世帯収入の年額500万円以上の者です。
ただ、日雇い派遣そのものにそれほど深刻な問題があるのかは疑問であり、短期の直接雇用は禁止されていないこととの整合性など疑問の多い立法ですし、禁止の除外業務、除外対象者についてもはたしてこのように定めることにどれだけの必然性があるのか疑問をもたざるをえないところです。
(2)グループ企業内派遣の8割規制
ある派遣会社からそのグループ企業内への派遣が8割を超えることが禁止されます。
派遣制度が企業内グループ内のみの雇用調整として利用されることは問題であるとして、これまでも特定の企業に派遣するための派遣業は「もっぱら派遣」と呼ばれ禁止されていました。しかしこれまでの法規制では抜け道も多かったため、このような規制が設けられました。
(3)離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止
労働条件切り下げの手段として派遣制度を利用することを避けるためにこのような規制が設けられました。
2 派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善
(1)無期雇用への転換推進措置
派遣元事業主との雇用期間が通算して1年以上である有期契約の派遣労働者等を雇用する場合、派遣元事業主に対し無期雇用への転換推進措置を講ずることを努力義務としました。
(2)均衡待遇の確保・情報の提供
その他、派遣労働者と他の労働者との均衡待遇の確保の努力義務、事業所ごとのマージン率を派遣労働者へ開示する義務、待遇に関する事項等の説明義務、派遣料金額の明示義務、派遣契約の中途解除時における派遣先の休業手当等の負担義務などが新たに定められました。
3 違法派遣に対する迅速・的確な対処
(1)労働契約申し込みみなし制度
違法派遣であることを派遣先が知らず、かつ、そのことについて派遣先に落ち度がない場合をのぞき、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対しその派遣元事業主における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申し込みをしたものとみなされることとしました。
ただ、実際には申し込みは存在していないわけですから、労働者がいつこれに対して承諾したと考えるのかなど実務上混乱が生じる可能性もあります。また、派遣の期間は通常3か月などの比較的短期であることが多いことから、直接雇用が成立するといってもこの法律が現実的に雇用の確保にどれだけ役立つのかについては慎重に見守る必要があると思います。
(2)欠格事由の整備
労働者派遣事業の許可に対する不正が多かったことから、過去に許可取り消しをされた者や許可取り消し手続きが開始された後に事業廃止の届け出をした者などについて、労働者派遣事業の許可等に関する欠格事由とされ、欠格事由が厳格化されています。