労働基準法が改正されることになりました。
平成20年12月12日に公布され、平成22年4月1日から施行されます。
主な内容は、以下の3点です。
(1)1か月60時間超の時間外労働について割増賃金を引き上げること(但し、中小企業については、当分の間適用が猶予されます。)。
(2)1か月45時間超の時間外労働については割増賃金を引上げることなどの努力義務が課せられること。
(3)年次有給休暇を時間単位で取得することが可能になったこと。
今度の改正の趣旨は、長時間労働を抑制し、労働者の健康確保や、仕事と生活の調和を図ることにあります。
派遣やパートなどの非正規雇用労働者が増える一方で、正社員の労働時間は、減少していません。
また、長時間労働等の過酷な労働環境に起因するうつ病に罹患する社員が増えており、長時間労働の増加によるメンタルヘルスの問題は重要な問題となっています。
さらに少子化問題を克服するには、よほど恵まれた環境になければ子育てと仕事を両立できないという現状を改善する必要があり、そのためには、子育て中の女性の負担を減らすだけではなく、男性や全ての女性について、仕事と生活の調和を図ることが可能な労働環境を作る必要があります。
今回の改正は、その手段として、直接労働時間の短縮を義務づけるのではなく、コスト面で企業の負担を増やし圧力をかけることによって、労働時間の短縮を実現しようとしているものです。
改正法の公布から施行まで1年半近くの期間をおいているのも、その間に、企業が従業員を増やすなどして労働時間の短縮を行うための準備期間を与えたものだと思われます。
改正の詳しい内容は以下のとおりです。
(1)1か月に60時間を超える時間外労働を行う場合は、割増賃金を現行の25%から50%以上とすることが定められました。
ただし、以下の(ア)か(イ)のいずれかにあたるいわゆる中小企業については、当面の間適用が猶予され、平成25年4月以降に改めて検討することになっています。
(ア) 資本金の額または出資の総額が 小売業・サービス業で5000万円以下、卸売業で1億円以下、これら以外で3億円以下である。
(イ) 常時使用する労働者数が、小売業で50人以下、サービス業・卸売業で100人以下、これら以外で300人以下である。
なお、これに関して、事業場で労使協定を締結すれば、1か月に60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、改正法による引き上げ分(25%から50%に引き上げた差の25%分)の割増賃金の支払いに変えて、有給休暇を付与することができます。
ただし、労働者がこの代替の有給休暇を取得した場合でも、現行の25%の割増賃金の支払いは必要です。
1か月に60時間超という非常な長時間勤務に対して、割増賃金を増やすことにより長時間勤務の抑止を行おうという趣旨です。
(2)現在の労働基準法でも、1か月に45時間を超えて時間外労働を行う場合には、あらかじめ労使で特別条項付きの時間外労働協定を締結する必要があります。
今回の改正では、これに加えて新たに、以下のことが必要となります。
(ア) 特別条項付きの時間外労働協定では、月45時間を超える時間外労働に対する割増賃金率も定めること
(イ) (ア)の率は25%を超える率とするように努めること
(ウ) 月45時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めること
これらの定めをすることにより、労使とも、月45時間を超える時間外労働についてより意識することが予想され、それによる労働時間の短縮が期待されたものです。
(3)現行では、年次休暇は日単位で取得することとされていますが、事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになります。
また、年次有給休暇を日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者が自由に選択することができます。
この規定はあくまで、労使協定が成立することが前提であり、強制的なものではありませんが、これにより、多様な働き方の選択が可能となり、ワークライフバランス確保への一助になると考えられます。