契約期間中の派遣契約の解除について
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急激な景気の悪化から製造業等で派遣社員が大量に契約を解除され、ニュースなどでも大きく取り扱われています。
そこで今回は、人材派遣を受けている会社(派遣先の会社)が、派遣期間中に派遣契約を解除するときの注意点について解説します。

契約期間の途中で派遣会社との派遣契約を解除しようとする場合、どのような法規制があるのでしょうか。
派遣契約はそもそも派遣会社と派遣先の契約ではありますが、派遣社員の保護の見地から以下のような法規制があります。

まず、労働者派遣法では派遣先が、派遣社員の国籍、信条、性別、社会的身分、労働組合の正当な行為をしたことなどを理由として、派遣契約を解除することを禁止しています。
また、厚生労働省の定める「労働者派遣事業関係業務取扱要領」により、派遣期間中に予定していた業務が早く終わったとか、受注量が減少したなどの派遣先の都合で派遣先を解除する場合には、派遣会社の同意を得ることはもちろんのこと、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣会社に解除の申し入れを行うこととされています。
そして同要領では、派遣先が派遣契約を解除しようとするときは、労働基準法上の解雇予告に準じて、解除しようとする日の少なくとも30日前にその旨の予告を行うこと、または、少なくとも派遣社員の30日分以上の賃金に相当する額の損害賠償を行うこととしています。
ただし、派遣会社と派遣先の双方に責任がある場合には、派遣会社と派遣先のそれぞれの責任の割合についても十分に考慮するものとし、
30日前の解除予告やその日数相当分の損害賠償義務は最低限のものであって、状況によってこれを超える損害賠償を妨げるものではない旨定められています。

派遣会社は、契約解除により仕事がない状態になっている派遣社員に対しては、労働基準法の定めによって、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならないため、正当な理由なく契約を解除され、派遣社員のその後の場所確保がどうしても不可能な場合には、残っている全期間について一定額の損害賠償請求が認められる場合が多いと考えられます。
なお、この場合の損害賠償請求権は、派遣会社から派遣先の会社になされることになります。

また、同要領では、派遣先は派遣会社からの求めがあったときは、派遣契約の解除を行った理由を派遣会社に対し明らかにすることとされています。これは、いずれに責任があるかをはっきりさせることにより、場合によっては派遣会社や派遣社員からの損害賠償請求等を可能にするために必要なことです。

なお、派遣先は、契約期間が満了する前に派遣社員の責任のない事由(先にあげた受注量の減少なども責任のない事由にあたります。)で派遣契約の解除を行った場合には、関連会社での就業をあっせんするなど新たな派遣先を確保しようと努める義務があります。

これらのことからすれば、後日の紛争可能性を考えると、派遣先から契約期間中の派遣契約を解除するのは、簡単にはできないと考えておくほうがよいと思います。