管理監督者の範囲について通達が出されました
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2008年1月にマクドナルドの店長に対する残業代の支払を命ずる東京地裁の判決が出てから、チェーン展開している小売店や飲食店の店長が管理監督者になるのか、という点が労務管理上のホットな話題になっています。

法律上は、労働基準法41条2号により、「監督もしくは管理の地位にある者(管理監督者)」については、労働時間や休憩、残業手当等につき、同法の規制の対象外になり、残業代を支払う必要がない、とされています。
このため、前記の裁判では、日本マクドナルドの店長が同法が定める「管理監督者」にあたるのかが争点となり、この店長は「管理監督者」にあたらず、会社は残業代を支払う義務があるとの判断がなされたのです。
この判決をきっかけに「管理監督者」の範囲について世間の耳目が集まったこともあり、以前にこのメルマガ2008年7月1日号でもお伝えしたように、マクドナルドのほか、コナカ、セブン-イレブン・ジャパンなどが店長に残業代を支払う制度に改め、店長を「管理監督者」として扱わない動きが起こっていました。

これらの動きを受けて、2008年9月9日、厚生労働省から「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(基発第0909001号)と題する通達が出されました。
その趣旨は、「小売業、飲食業等において、いわゆるチェーン店の形態により相当数の店舗を展開して事業活動を行う企業においては、店長等の少数の正社員と多数のアルバイト・パート等により運営されている実態がみられるが、この店舗の店長等については、十分な権限、相当の待遇等が与えられていないにもかかわらず「管理監督者」として取り扱われるなど不適切な事案がみられるため」、労働基準監督署の把握した実態及び最近の裁判例を参考として、「店舗の店長等の管理監督者性の判断にあたっての特徴的な要素」をとりまとめ、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛に通達が出されたものです。
この通達で明らかにされた「店舗の店長等の管理監督者性の判断にあたっての特徴的な要素」は、かなり具体的なものであり、概要は以下のとおりです。

1「職務内容、責任と権限」
(1) アルバイト・パート等の採用について責任と権限がない(管理監督者性を否定する重要な要素。以下(重)とのみ記載。)
(2) アルバイト・パート等の解雇について職務内容に含まれず、実質的にも関与せず(重)
(3) 部下の人事考課について職務内容に含まれず、実質的にも関与せず(重)
(4) 勤務割表の作成、所定時間外労働の命令について責任と権限がない(重)

2「勤務態様」
(1) 遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる(重)
(2) 長時間労働を余儀なくされるなど、実際には労働時間に関する裁量がほどんとない(管理監督者性を否定する補強要素。以下(補)とのみ記載)
(3) 労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大変を占める(補)

3「賃金等の待遇」
(1) 時間単価換算した場合にアルバイト・パート等の賃金額に満たない(重)
(2) 時間単価換算した場合に最低賃金額に満たない(重)
(3) 役職手当等の優遇措置が割増賃金が支払われないことを考慮すると十分でなく労働者の保護に欠ける(補)
(4) 年間の賃金総額が一般労働者と比べ同程度以下である(補)

判断にあたっては上記の要素に他の要素も含め総合的に判断されることになります。

この通達は、各労働基準監督署の一般的な指導の基準であり、マクドナルド事件の基準にくらべれば「管理監督者」の範囲がやや広いように読めますが、逆に言えば、この基準を下回れば明らかな違法状態ということになると思われますので、労務管理上、注意が必要です。