ガス湯沸かし器などによる重大事故を受け、「長期使用製品安全点検制度」等を導入すべく、改正消費生活用製品安全法が昨年11月21日公布され、来春、2009年春に施行が予定されています。
この改正は、昨年5月施行の「製品事故情報報告・公表制度」に続くものですが、特に製品の経年劣化による事故を防止するためのさらなる改正です。
改正法の柱である「長期使用製品安全点検制度」について概説します。
この制度は、経年劣化により消費者の生命・身体に特に重大な危害を及ぼす恐れのある製品について、その製造業者に対し、「標準設計使用期間」、「点検期間」を定めて、製品に表示することを義務付け、「点検期間」が到来するころ、製品の購入者に点検の必要性を通知し、購入者から求めがあれば、点検に応じなければならないとするものです。
対象となる製品は「特定保守製品」とされ、具体的な品目は政令で定められますが、現在のところ、屋内型ガス瞬間湯沸器(都市ガス、LPガス)、屋内型ガスバーナー付ふろがま(都市ガス、LPガス)、石油給湯器、石油ふろがま、密閉式石油温風暖房器、ビルトイン型電気食器洗機、浴室用電気乾燥機の9品目が検討されているとのことです。
これら特定保守製品の製造業者または輸入業者には、「設計標準使用期間」と「点検期間」の設定が義務付けられます。
「設計標準使用期間」とは、「標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障がなく使用することができる標準的な期間として設計上設定される期間」と定義されています。食品でいえば、消費期限のようなものでしょう。一律ではなく、メーカー等が製品に応じて一定の根拠に基づき定めるものです。
「点検期間」とは、設計標準使用期間の経過に伴って必要となる、経年劣化による危害防止のための点検を行うべき期間です。
メーカー等は製品の販売時までに、この「設計標準使用期間」と「点検期間」、また、点検のための連絡先などを製品に表示しなければなりません。さらに、販売に際しては、その製品の所有者情報(氏名・製品の所在場所等)をメーカー等に提供するための書面(所有者票)を添付しておかなくてはなりません。
製品の小売業者は、顧客への販売に際して、その製品が経年劣化で危害が及ぼすおそれが多く保守が必要なこと、所有者情報を提供した場合には(後述する)点検の通知があることなどを説明する必要があります。
所有者票は「顧客情報カード」とも呼ばれており、製品の所有者はこのカードをメーカー等に送るなどして所有者情報を提供することになっています。
メーカー等は顧客情報カードで提供された情報を「所有者名簿」にして適切に管理し、「点検期間」が始まる前に、ダイレクトメールやメールで、点検が必要との通知を発しなければなりません。
引っ越しすればメーカーはどうすればいいのか、という素朴な疑問がわきますが、法律には「通知を発しなければならない」と規定されているので、所有者から知らされた住所(変更があったときも所有者から知らせることになっています)宛てに「発す」れば、仮に着かなくても、それで足りる、という方針を取っているとみることができます。
点検期間内に製品所有者から点検の実施を求められたときは、メーカー等は点検を行うことが義務付けられています。点検にかかる料金は定めておく必要があります。
メーカー等は以上の点検実施体制を整備しておくことが義務付けられ、これに違反する場合は経済産業大臣から改善命令を受けることになります。
メーカー等が倒産するなどして点検が実施できない場合の問題がありますが、このような場合について改正法は、当該製品について点検が実施できる事業者に関する情報を経済産業大臣が収集・公表する義務を負うことを定めています。
この改正法は、消費者サイドからも氏名・住所等の情報を提供することが求められ、かつ、点検を発するまでがメーカー側の義務で、実際に点検を求めるかどうかは消費者の判断とされているのが特徴です。消費者側にも自衛策をとることが求められています。
気をつけないといけないのは、賃貸マンションのオーナーです。貸室にガス瞬間湯沸かし器など特定保守製品があれば、これについて点検期間内に点検を行うなど保守の努力義務が規定されています。賃借人に安全に部屋を使用させるため、この点検制度があることにも注意しなければなりません。