法務省は平成17年3月22日に「国際私法の現代化に関する要綱中間試案」を公表し、パブリックコメントを募集しました。
大阪弁護士会もパブリックコメントを提出しています。
また、これらのパブリックコメントを集計した結果も公表されています(http://www.moj.go.jp/PUBLIC/)。
今回は、この新たな法律改正の動きについてレポートします。
国際私法というのは、簡単に言えば、外国人と日本人、外国人と外国人の間の法律問題について、日本の裁判所はどの国の法律を適用するか(適用される法律を準拠法といいます)についての定めをいい、日本では「法例」という名前の法律になっています。
この法律は、明治31年に制定され、何度かの改正(最近では平成11年)を経ていますが、今回は、これを口語化するとともに、現代の国際化の流れに適合するために改正を加えようとするものです。
外国人との紛争というとあまり身近ではないようですが、結婚等の親族問題、外国で事故を起こした等の問題、外国企業との取引きの問題等、結構あるものです。
今回の改正は多岐にわたっていますが、契約などの法律行為についても大幅に改正される予定です。
日本の会社が外国の会社と契約をする場合、どの国の法律を適用するかは大きな関心事です。当然、自分の国の法律を適用する方が内容もわかっていますし、弁護士を頼むのも容易です。そのため、契約書には、どの国の法律を適用するかを記載することが多いのです。
しかし、準拠法については合意に達しなかった等の理由により決められていないこともあります。そのような場合、どの国の法律を適用するかは国際私法によって決められます。
日本で訴訟をする場合には、法例により決められることになり、今までは契約を締結した場所の法律を適用するとしていました。しかし、契約を締結した場所といっても、現代のようにファックスやメールでのやりとりが普通になってくると、どの場所が契約の締結地か明確でないこともよくあります。このような場合、従来の取扱いでは、明確には合意はなかったが、黙示では合意があったとして、結局、最も密接に関連する国の法律を準拠法とするようにしていたようですが、これだと準拠法を定めるのに証人尋問が必要になってくる場合もあり、訴訟手続きの入り口で時間が空費される可能性もありました。
今回の改正では、従来の取扱いと結論はあまり変わらないとは思われますが、明確に、その契約の内容に最も密接に関係する土地の法律を準拠法とすることを原則として、労働契約や不動産に関する契約については個別に定める案が浮上しています。
国際的な法的問題については、どの国の法律を適用するか以外にも、どの国の裁判所で裁判をするべきか(国際裁判管轄といいます)、外国での裁判所の判決等について強制執行できるか(外国判決等の承認執行といいます)の問題がありますが、今回の改正では、後二者についてはヘーグ国際私法会議で立法作業が行われていることから、取り上げていません。
準拠法に関する今回の改正の動向だけでなく、国際裁判管轄、外国判決等の承認執行についても、今後の制定がどのようになるか興味があるところです。